2025年 | プレスリリース・研究成果
眼科専門医レベルの緑内障診断AIの開発に成功 医療過疎地や大規模眼底写真検診での応用に期待
【本学研究者情報】
〇医学系研究科眼科学分野 教授 中澤徹
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 眼科専門医の診断過程を模した高精度な緑内障(注1)スクリーニングAIを開発しました。
- AIによるスクリーニングの判断根拠が数値で示されることで、画像から診断を下す読影医(注2)もAIの診断結果を容易に理解できます。
- 軽量設計なAIであり、携帯型デバイスへの利用も期待されます。
【概要】
緑内障は日本における失明の主要原因ですが、初期段階では自覚症状が少なく診断が難しいという課題があります。
東北大学大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹(なかざわとおる)教授、シャルマ・パーマナント准教授らの研究チームは、AIを活用した緑内障スクリーニング(AI-GS)ネットワークを開発しました。このAIは、緑内障の診断上重要な所見を個別に解析し、それらの結果を統合して緑内障の有無を判定します。8000枚の眼底写真を用いた検証結果では、感度(注3)93.52%、特異度(注4)95%という高精度を達成し、特に初期緑内障の検出性能が優れています。
また、AIの判定結果を数値で示すことで、従来のAIが抱えていた「ブラックボックス」問題(注5)を解消し、読影医がAIの判断根拠を理解できる点も大きな特徴です。さらに、本モデルは軽量設計であり、携帯型デバイスでも利用可能であるため、専門医が不足する地域での活用の可能性もあります。今後、医療過疎地や大規模眼底写真検診において、このAIを活用した大規模スクリーニングが期待されます。
本研究成果は、2025年2月27日付でnpj Digital Medicineに掲載されました。

図1. 研究グループが開発したAI-GSの緑内障診断AI-GS
【用語解説】
注1.緑内障:通常、眼圧の上昇によって視神経が障害され、視野が狭くなる病気です。眼圧を下げる治療により進行を遅らせることができます。40歳以上で20人に一人、60歳以上では10人に一人以上の患者さんがいます。
注2. 読影医:レントゲンや心電図などの画像を読み解き、疾患の有無について読影する医師のこと。ここでは眼底写真から緑内障の有無を判定する医師を指します。
注3. 感度:病気があることを正しく「陽性」と判定できる割合のこと。感度が高いほど、「病気の人を見逃さない能力」が高いといえます。一方で感度が高くても、健康な人を間違って陽性を判定することがあるので、特異度とセットで考えることが重要です。
注4.特異度:病気でない人を正しく「陰性」と判定できる割合のこと。特異度が高いほど「健康な人を誤って陽性とするミスが少ない」ことを意味します。
注5. 「ブラックボックス」問題:AIがどのようにして特定の判断や予測を行ったのか人間には理解しにくい状態のこと。AIは非常に複雑な計算を行っているため、AIの意思決定のプロセスを説明するのが難しいことが問題となります。
【論文情報】
タイトル:A hybrid multi model artificial intelligence approach for glaucoma screening using fundus images
著者: Sharma Parmanand(シャルマ・パーマナント)*、高橋直樹、二宮高洋、佐藤正隆、津田聡、中澤徹*
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 准教授 Sharma Parmanand(シャルマ・パーマナント)、東北大学大学院医学系研究科教授 中澤徹
掲載誌:npj Digital Medicine
DOI:10.1038/s41746-025-01473-w
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
眼科学分野教授 中澤 徹(なかざわ とおる)
TEL: 022-717-7294
Email: toru.nakazawa.e1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL:022-717-8032
Email:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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