2025年 | プレスリリース・研究成果
光を用いたアリルアルコール修飾法の開発に成功 ~環境に優しく実用的な合成法~
【本学研究者情報】
〇大学院薬学研究科 合成制御化学分野
教授 岩渕好治
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 青色LEDライトを使用し、様々な化成品の出発原料として汎用されているアリルアルコール(注1)の二炭素官能基化が可能なタンデム型(注2)上野ストーク環化反応の開発に成功しました。
- 5、6、7員環や複数の環を含む環状アリルアルコールに加え、これまで利用できなかった鎖状アリルアルコールの修飾も可能です。
- 本反応は環境に優しく実用性の高い反応であることから、医薬品や天然物の合成に広く利用されることが期待されます。
【概要】
上野ストーク環化反応はアリルアルコールを効率的に修飾する方法として40年以上前から知られている反応で、通常は二つあるアルケン炭素のうちの一箇所で炭素-炭素結合を形成します。一方、近年では二つあるアルケン炭素のうち二箇所同時に炭素-炭素結合を形成できるタンデム反応が、その効率性から注目を集めています。しかしながら、これまで報告されている手法は有毒な試薬を必要とする点や、反応の実用性が低いなどの課題がありました。
東北大学大学院薬学研究科の岩渕好治教授らの研究グループは、青色LEDを使う条件にて、環境調和性、実用性に優れたタンデム型上野ストーク環化反応の開発に成功しました。本手法は幅広いアリルアルコール誘導体や電子不足アルケン(注3)に適用可能であり、多様性に富んだ修飾を可能とする点が大きな特徴です。この特徴を活かし、複雑な分子構造を有する医薬品の合成に広く応用されることが期待されます。
本成果は、2025年2月14日にアメリカ化学会の学術誌Organic Lettersにオンライン掲載されました。

図1. 上野-ストーク環化反応について
【用語解説】
注1. アリルアルコール
アルケン(炭素-炭素二重結合)とアルコール(ヒドロキシ基を有する構造単位)が隣接した化合物群の総称。様々な化成品の出発原料として汎用される。
注2. タンデム型(反応)
一つの反応系の中で複数の結合を形成する反応の総称。今回の場合は、炭素-炭素結合が2つできる。
注3. 電子不足アルケン
電子求引基が結合している、電子密度の低いアルケン。通常、電子豊富な化学種やラジカルに対して高い反応性を示す。
【論文情報】
タイトル:Photocatalytic Tandem Ueno-Stork Cyclization/Intermolecular Giese Addition Sequence for Stereoselective Difunctionalization of Allylic Alcohols
著者:Yuki Tateishi、 Shota Nagasawa、 Yoshiharu Iwabuchi*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 教授 岩渕好治
掲載誌:Organic Letters
DOI:10.1021/acs.orglett.5c00287
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
教授 岩渕好治
TEL:022-795-6846
Email: y-iwabuchi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部
総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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