2025年 | プレスリリース・研究成果
日本列島下の全マントル構造とマントル流れ場の高精度推定に成功 ─ 大規模地震や火山噴火の根本理解に一歩 ─
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科
附属地震・噴火予知研究観測センター
助教 豊国 源知(とよくに げんち)
東北大学研究者紹介
【発表のポイント】
- 日本列島下の地表から核-マントル境界(深さ2889 km)までの全マントル3次元構造を初めて詳細に明らかにした。
- 新規開発した手法で、全マントル流れ場の高精度推定にも成功した。
- 千島弧(注1)で発生する巨大噴火は、マントル深部からの熱い上昇流が、沈み込んだプレートの穴を通って島弧マグマと混合することで発生していると考えられる。
【概要】
日本とその周辺地域では、複雑なプレート沈み込み帯が形成されており、大規模な地震や火山噴火が頻繁に発生しています。地震や噴火は地下構造と密接に関連していますが、従来の地下構造研究は上部マントル(深さ660 km以浅)に特化したものがほとんどで、下部マントル(深さ660~2889 km)も含めた全マントル構造の詳細な推定を行った研究はありませんでした。
東北大学大学院理学研究科 附属地震・噴火予知研究観測センターの豊国源知助教と趙大鵬教授、高田大輔大学院生(研究当時)の研究グループは、最先端の地下構造推定手法を用いて、本地域下の全マントル3次元構造を初めて高精度で推定しました。この結果、千島弧における巨大噴火は、マントル深部からエネルギー供給を受けて発生している可能性が見いだされました。
またマントルの流れを可視化できる手法を開発し、本地域下の全マントル流れ場も世界で初めて高精度で推定しました。この結果、本地域下に沈み込んだ太平洋プレートが、複数のブロックに分かれて間欠的に下部マントルに沈み込んでいることが明らかとなりました。
本成果は3月1日、米国地球物理学連合(AGU)の科学誌Journal of Geophysical Research: Solid Earthにオンライン掲載されました。

図1. 日本とその周辺地域。陸側のオホーツク海プレートとユーラシアプレートの下に、海側の太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいる。プレートが沈み込む境界と沈み込み方向を、鋸歯付きの黒太線で示した。▲は活火山。ピンク色の線は、沈み込んだ太平洋プレート(スラブ)の等深線を50 km間隔でプロットしたもの。
【用語解説】
注1. 千島弧:島弧(とうこ)は、海溝の内側(大陸側)に形成される、弧状に島々がつらなった構造です。千島弧(ちしまこ)は、千島列島から北海道中央部にかけて延びる島弧です。
【論文情報】
タイトル:Whole-mantle isotropic and anisotropic tomography beneath Japan and adjacent regions
著者:Genti Toyokuni, Dapeng Zhao, Daisuke Takada
*責任著者: 豊国 源知(東北大学大学院理学研究科 助教)
趙 大鵬 (東北大学大学院理学研究科 教授)
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Solid Earth
DOI:10.1029/2024JB029593
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科附属
地震・噴火予知研究観測センター
助教 豊国 源知(とよくに げんち)
Email:toyokuni*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL: 022-795-6708
Email: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)