2025年 | プレスリリース・研究成果
強力な温室効果ガスN₂Oを高速除去できる バイオプロセスを開発
【本学研究者情報】
〇大学院環境科学研究科 准教授 久保田健吾
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 一酸化二窒素(N2O)を除去する新たなプロセスを開発しました。
- 本プロセスはN2Oを高速で除去可能であり、高濃度N2Oに対しても高い処理性能を有しています。
- N2Oの除去に微生物反応を利用しており、環境への負荷が低く、廃水処理プロセス由来の温室効果ガス削減などへ寄与することが期待できます。
【概要】
N2Oは二酸化炭素(CO2)の273倍の地球温暖化係数を持つ強力な温室効果ガスで、温暖化効果への寄与率は6%程度と見積もられています。また、21世紀最大のオゾン層破壊物質としても知られる環境負荷の高い物質です。人為起源のN2O排出量のうち廃水・廃棄物由来が全体の5%程度を占め、その中には廃水処理プロセスからの排出が含まれます。廃水処理プロセスからのN2Oの排出量削減に関する研究の多くは発生抑制に着眼点がおかれています。一方で、発生したN2Oの除去に関する研究は多くありません。
東北大学大学院環境科学研究科の久保田健吾 准教授と前田稜太 大学院生らは、大学院生命科学研究科の南澤究 特任教授と共同で、スポンジ担体を吊るしたDown-flow Hanging Sponge(DHS)(注1)リアクターを用いた微生物反応によるN2O除去プロセスを開発しました(図1)。本プロセスは廃水処理プロセスのなかでも特に窒素処理における無酸素槽から発生するN2Oを標的としており、実験では無酸素環境で5-300 ppmの濃度域では3分程度、2,000 ppmと高濃度の場合でも18分で94%以上のN2O除去を達成しました。本技術は廃水処理プロセスからのN2O排出量を低減でき、持続可能な社会の構築に貢献できるものです。
本成果は2025年4月25日に化学工学分野の専門誌Chemical Engineering Journalに掲載されました。

図1. DHSリアクターを用いたN2O除去バイオプロセス
【用語解説】
注1. Down-flow Hanging Sponge(DHS):下降流スポンジ懸垂。スポンジ担体を懸垂し、上部から廃水を流入させスポンジに生息する微生物の働きによって廃水を処理する。気液平衡により気相の物質が液相に溶け込むため、曝気などが不要で省エネルギーなプロセスである。
【論文情報】
タイトル:Mitigating nitrous oxide emission by a down-flow hanging sponge bioprocess enabling the removal of high concentration N2O
著者: Ryota Maeda, Mikiko Sato, Kiwamu Minamisawa, Kengo Kubota*
*責任著者:東北大学大学院環境科学研究科 准教授 久保田健吾
掲載誌:Chemical Engineering Journal
DOI:10.1016/j.cej.2025.162885
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 大学院環境科学研究科
准教授 久保田健吾
TEL: 022-795-5011
Email: kengo.kubota.a7*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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