2025年 | プレスリリース・研究成果
DNAナノポアセンサでオーダーメイドに分子を検出! ~創薬や診断に役立つバイオセンサの創出に向けて~
【本学研究者情報】
〇流体科学研究所 准教授 馬渕拓哉
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- DNAナノポア(注1)を用いた分子選択性の高いナノポアセンサ(注2)を提案
- DNAナノポアセンサによるアデノシン三リン酸(ATP)(注3)の選択的検出に成功
- 様々な物質を選択的に検出できるナノポアセンサとして、創薬や疾患診断などへの応用展開に期待
【概要】
長岡技術科学大学 技学研究院 機械系の庄司 観准教授、大学院工学研究科 先端工学専攻 材料工学分野の赤井 大夢(博士後期課程3年、函館工業高等専門学校出身)は、東北大学 流体科学研究所の馬渕 拓哉准教授、大学院工学研究科の平野 太一(博士後期課程1年)と共同で、分子を選択的に検出できる「DNAナノポアセンサ」を開発しました。
本センサに応用したDNAナノポアは、人工細胞膜中でイオンの通り道として働く膜貫通ドメインと、標的分子であるアデノシン三リン酸(ATP)に選択的に結合する機能を持つ核酸分子であるATP結合アプタマー(注4)で構成されています。本研究グループは、ATPとアプタマーの結合・解離による膜貫通ドメインの可逆的な開閉動作を、ナノポアを通過するイオン電流の変化として計測することで、ATPの選択的検出に成功しました(図1)。本技術は、アプタマーの塩基配列を変更することで様々な生体分子に応用できる可能性を有しており、創薬や疾患診断などの分野へのナノポア計測技術の応用展開を促進することが期待されます。

DNAナノポアセンサのイメージ図。金ニードル電極の先端に固定化されたDNAナノポアを人工細胞膜に物理的に挿入し、分子選択的なナノポアセンシングを行う。
【用語解説】
注1)DNAナノポア
DNAで構築されたナノメートルスケールの細孔。人工細胞膜に挿入されるとイオンの通り道として働く。
注2)ナノポアセンサ
ナノポアと標的分子の相互作用によるイオン電流の変化から、標的分子を検出する技術。
注3)アデノシン三リン酸(ATP)
生体内の化学反応を引き起こすエネルギー源として用いられる小分子。
注4)アプタマー
特定の分子と結合して立体構造を構築する核酸分子。塩基配列次第で様々な分子を標的とすることができる。
【論文情報】
論文名:Specific ATP Detection Using Molecule-Responsive DNA Nanopores
著者:Hiromu Akai, Taichi Hirano, Takuya Mabuchi and Kan Shoji
URL:https://doi.org/10.1002/smll.202409293
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 流体科学研究所 准教授
馬渕拓哉(まぶち たくや)
Tel: 022-217-5225
Email: mabuchi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
国際研究戦略室(広報)
TEL:022-217-5873
Email:ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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