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二酸化炭素から高効率で還元剤のシュウ酸を合成する技術を開発 ─ Net-Zero-Emission型製鉄法が実現に期待 ─

【本学研究者情報】

学際科学フロンティア研究所
助教 田原淳士(たはら あつし)
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 二酸化炭素(CO2)の水素化体であるギ酸塩の二量化反応(注1)で植物にも含まれる有機酸のシュウ酸(注2)を合成する際、水酸化セシウム(CsOH)を添加すると、炭酸ナトリウム(Na2CO3)添加時と比較して収率(注3)が3倍に向上することを見出しました。
  • 理論科学と実験科学の融合を経て、従来、反応性を決定づけると見られていた添加剤のアニオン(注4)部分だけではなく、カチオン(注4)部分の選択が収率に大きく影響することを立証しました。
  • シュウ酸は還元性が高く、特に鉄鉱石から還元鉄を得る製鉄法において、コークスを還元剤とする現行法と比較して大幅なCO2排出量の低下が可能な次世代還元剤としての利用が期待されます。

【概要】

環境負荷の観点から、CO2排出量の削減および資源利用が産学問わず求められています。CO2から誘導されるギ酸塩は高温条件で二量化し、植物などにも含まれる有機酸であるシュウ酸となることが知られています。しかし二量化反応の過程で生成したシュウ酸の熱分解を伴うため、効率的な二量化を達成するための反応条件の探索が求められていました。

東北大学学際科学フロンティア研究所の田原淳士助教は、九州大学先導物質化学研究所の工藤真二准教授、林潤一郎教授らと共同で、CsOHを添加した際に高収率でシュウ酸が生成することを見出しました。得られたシュウ酸は還元剤として利用可能であり、特に鉄鉱石から還元鉄を得る製鉄法において、コークスを還元剤とする現行法と比較して大幅なCO2排出量の低下が可能な次世代還元剤としての利用が期待されます。

本成果は 2025 年 4 月 23 日付で、科学誌Frontiers in Chemistryの「Renewable Chemistry」特集号に掲載されました。

図1. 二酸化炭素からの誘導体であるギ酸塩を用いたシュウ酸合成において、水酸化セシウムを添加すると収率が向上することを見出した。

【用語解説】

注1. 二量化反応:2つの同種の分子やサブユニットが物理的・化学的な力によってまとまった分子を二量体と呼び、二量体を形成することを二量化反応という。

注2. シュウ酸:HOOC-COOHの分子式を持つ有機酸。植物などに含まれる。還元剤として利用される。

注3. 収率:化学反応で得られた生成物の量が、理論上得られる最大量に対してどの程度かを示す割合。

注4. アニオン / カチオン:アニオンは負の電荷を帯びたイオンで、ギ酸イオン、炭酸イオン、水酸化物イオンなどが該当する。カチオンは正の電荷を帯びたイオンで、ナトリウムイオン、セシウムイオンなどが該当する。

【論文情報】

タイトル:Effect of alkali metal cations on dehydrogenative coupling of formate anions to oxalate
著者:Atsushi Tahara*, Aska Mori, Jun-ichiro Hayashi, Shinji Kudo
*責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所 助教 田原淳士
掲載誌:Frontiers in Chemistry
DOI:10.3389/fchem.2025.1588773

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 田原淳士(たはら あつし)
TEL: 022-795-6868
Email: tahara.a.aa*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所 企画部
特任准教授 藤原 英明(ふじわら ひであき)
TEL: 022-795-5259
Email: hideaki*fris.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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