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構造変換機能を示す三回対称性の超分子集合体開発に成功 ─ センサー、メモリ、省エネデバイスなどへの応用展開に期待 ─

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 助教 笠原遥太郎
多元物質科学研究所 助教 出倉駿
多元物質科学研究所 教授 芥川智行
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ある軸を中心に120度回転するともとに戻る三回対称性(注1)を持つ有機分子が形成する超分子集合体(注2)を用いて、溶媒条件により二種類の異なる構造(一次元ナノファイバーと二次元層状構造)を選択的に作り分けることに成功しました。
  • 一分子中に三つの水素結合部位を持つ分子の配列を制御し、これまでにない構造変換機能を実現しました。
  • 分子の三回対称性を活用した新しい分子設計指針を確立し、次世代エレクトロニクス材料への応用の可能性を提示しました。

【概要】

有機材料は、その分子集合様式や分子間に働く様々な相互作用を化学的に制御することによって多彩な機能を引き出すことができます。現在の電子デバイスのほとんどはシリコンに代表される無機材料で作られていますが、有機材料に置き換えることによって、柔らかくて曲げに強い、真空装置がいらない印刷技術で、短時間で製造できるなど様々な利点があります。

東北大学多元物質科学研究所の笠原遥太郎助教、出倉駿助教と芥川智行教授および信州大学学術研究院理学系の武田貴志准教授らの研究グループは、三回対称性を持つ有機分子が形成する超分子集合体を用いて、溶媒条件により一次元ナノファイバー(NF)構造(注3)と二次元層状(LM)構造(注4)という二つの異なる構造を選択的に作り分けることに成功しました。さらに一次元NF構造から二次元LM構造への熱による構造変換を実現し、構造変換に伴う光学特性の変化も確認しました。この成果は、次世代エレクトロニクス材料の開発に向けた新しい分子設計指針を提供するものです。

本研究の成果は米国現地時間の2025年5月25日、米国化学会の学術誌Journal of the American Chemical Societyにてオンライン掲載されました。

なお本成果は、北里大学未来工学部の石井良樹講師、大阪大学大学院基礎工学研究科の久木一朗教授、国立研究開発法人物質・材料研究機構有機材料グループの姉帯勇人研究員、高井淳朗主任研究員、竹内正之グループリーダーらとの共同研究によるものです。

図1.開発した分子の化学構造。

【用語解説】

注1.対称性:ある図形に一定の操作を施して得られる新しい図形が元の図形と同じになる時、図形は対称性を持つと言います。分子の対称性については、ある軸を中心に周りを回転させると不変となる性質で、360/n(nは整数)度回転させると重なるものをn回対称と言います。二回対称は180度、三回対称は120度、六回対称は60度回転させると重なります。

注2.超分子集合体:複数の分子が共有結合ではなく、水素結合やファンデルワールス力などの非共有結合的相互作用によって自発的に集合した構造体となります。

注3.一次元ナノファイバー(NF)構造:分子が一方向に配列して形成される繊維状の超分子構造。本研究では、三つのアルキルアミド基による水素結合ネットワークにより形成されます。

注4.二次元層状(LM)構造:分子が二次元平面状に配列した構造。本研究では、二つのアルキルアミド基による水素結合と分子パッキング効果により形成されます。

【論文情報】

タイトル:Supramolecular Polymorphism of the Hydrogen-Bonded C3-Symmetrical Hexadehydrotribenzo[12]annulene Derivative
著者:Yotaro Kasahara, Takashi Takeda*, Shun Dekura, Yoshiki Ishii, Hayato Anetai, Atsuro Takai, Ichiro Hisaki, Masayuki Takeuchi, and Tomoyuki Akutagawa*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 教授 芥川智行
信州大学学術研究院理学系 准教授 武田貴志
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:10.1021/jacs.5c02529

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 芥川 智行(あくたがわ ともゆき)
TEL: 022-217-5653
Email: akutagawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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