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もみ殻と鉱山副産物から高耐久性燃料電池触媒を開発 ~農業・鉱山副産物の再資源化で持続可能な電池技術へ~

【本学研究者情報】

〇学際科学フロンティア研究所
助教 中安 祐太
研究所ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 農業廃棄物のもみ殻と鉱山副産物のパイライト(黄鉄鉱:FeS2)から、白金(Pt)に代わる高耐久な電池用触媒を開発しました。
  • これまで活性炭や電極材料では除去対象だったもみ殻中の非晶質シリカ(アモルファスSiO₂)(注1が、触媒として機能するパイライト内の鉄と結合し、安定性を高める可能性が示されました。
  • 廃棄物を活用して高性能と長寿命を両立するこの技術は、再生可能エネルギーの貯蔵や白金など希少な非鉄金属であるレアメタル依存の低減に貢献します。

【概要】

世界で年間約1億トン以上が発生するもみ殻は、分解されにくく用途が限られるため、多くが焼却処分されてきました。一方、銅鉱石である「チャルコパイライト(黄銅鉱:CuFeS2)」の副産物であるパイライトも活用が進んでおらず、環境負荷が問題となっています。

東北大学学際科学フロンティア研究所の中安祐太助教と同阿部博弥准教授、同大学院工学研究科のEdwin Nyangau Osebe大学院生と渡邉賢教授らの研究グループは、こうした未利用資源に着目し、秋田大学、北海道大学、物質・材料研究機構などとの共同研究により、もみ殻とパイライトを原料とした燃料電池用触媒の開発に成功しました。この触媒は、特に白金が劣化しやすい酸性環境でも高い安定性を示し、従来は高価な白金にしかできなかった電池内の酸素反応を担うことが期待されます。さらに、電極材料化の際に導電性向上のため除去されてきたもみ殻由来の非晶質シリカが、鉄との相互作用により触媒の耐久性を高める可能性が示されました。本研究は、廃棄物の価値を見直すと同時に、希少金属の低減や低コスト化に貢献する、新たな電池材料技術として注目されます。

本成果は7月1日、電力に関する分野の専門誌Journal of Power Sources に掲載されました。

図1. 本取り組みの概要図

【用語解説】

注1. 非晶質シリカ(アモルファスSiO₂)
結晶構造を持たないシリカ(酸化ケイ素)のこと。もみ殻には多く含まれ、従来は除去対象とされてきたが、本研究では触媒の構造安定化に貢献している可能性がある。

【論文情報】

タイトル:Highly Active and Stable Fe-N₄ Catalyst from Unused Natural Resources for Oxygen Reduction Reaction in Acidic to Alkaline Medium
著者:Edwin Osebe Nyangau, Hiroya Abe, Kazutoshi Haga, Chie Ooka, Kenji Hayashida, Naoka Nagamura, Kotaro Takeyasu, Masaru Watanabe, Yuta Nakayasu*
*責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 中安 祐太
掲載誌:Journal of Power Sources
DOI:10.1016/j.jpowsour.2025.237784

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
助教 中安祐太
TEL:022-795-5872
Email: nakayasu*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所 企画部
藤原 英明
TEL: 022-795-5259
Email: hideaki*fris.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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