2025年 | プレスリリース・研究成果
光子1個の微弱光で最適化問題を解ける計算機の新原理を提案 ─量子デジタルハイブリッドコンピューティングにおける大きな進展に期待─
【本学研究者情報】
〇大学院情報科学研究科
教授 小林広明
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 光の量子力学的な効果を活用して効率的に組み合わせ最適化問題を解く新しい「コヒーレントイジングマシン(CIM)」を提案しました。
- 通常のCIMに比べ、極めて微弱な光で高い性能を示す「単一光子CIM」の可能性を理論・数値シミュレーションにより実証しました。
- 今回提案された単一光子CIMはパルスあたり平均1光子という極限の量子状態で動作し、通常であれば光損失やバックグラウンドノイズによって失われるはずの量子もつれが、量子計測とフィードバック制御によって有効活用されることを示した量子デジタルハイブリッドコンピューティングにおける大きな進展となる成果です。
【概要】
東北大学大学院情報科学研究科の熊谷政仁特任助教と小林広明教授らは、NTT Research, Inc.Physics & Informatics研究所米国カリフォルニア州サニーベール、所長 山本喜久)と共同で、量子光学的原理に基づいた新しいタイプの計算機「単一光子コヒーレントイジングマシン(CIM)」を提案し、その性能評価を行いました。本成果は、制約付き最適化問題(注1)に定式化される教師なし機械学習の代表的課題に対して、極めて微弱な光(平均1光子/パルス)で高い最適解探索能力を持つことを世界で初めて示したものです。
研究成果は、英国物理学会(IOP)が発行する量子科学技術分野の学術誌Quantum Science and Technologyに掲載されました。

図1. 単一光子CIMシステムの構成
各パルスはFPGA回路を用いた制御により、平均光子数が1程度となるように維持されている。
【用語解説】
注1. 制約付き組み合わせ最適化問題:複数の選択肢の中から最適な組み合わ
せを選ぶ「組み合わせ最適化問題」において、特定の制約(条件)が与えられた問題。本研究においては、類似するデータからなるグループを作成する組合せ最適化問題であるクラスタリングにおいて、全てのデータがただ一つのクラスタ(グループのこと)に所属するという制約が課せられている。
【論文情報】
タイトル: Single Photon Coherent Ising Machines for Constrained Optimization Problems
著者: Masahito Kumagai, Yoshitaka Inui, Edwin Ng, Satoshi Kako, Kazuhiko Komatsu, Hiroaki Kobayashi and Yoshihisa Yamamoto
*責任著者: 東北大学大学院情報科学研究科 特任助教(研究) 熊谷政仁
掲載誌: Quantum Science and Technology
DOI: 10.1088/2058-9565/addde5
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院情報科学研究科
教授 小林広明
TEL: (022)795-7010
Email: koba*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院情報科学研究科
広報室 鹿野絵里
TEL: (022)795-4529
Email:koho_is*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています