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貴金属を用いず水電解の過電圧を低減する技術を開発 ─低コストなグリーン水素製造の実現に期待─

【本学研究者情報】

〇材料科学高等研究所 教授 藪浩
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 水電解過電圧(注1)の主要因である酸素発生反応をレドックス化合物(注2)の酸化反応に置き換えることで、高価な貴金属触媒を用いず過電圧を劇的に低減
  • 光還元できるレドックス化合物を用いることで低過電圧の保持に成功
  • 水電解だけでなく様々な電解反応等への展開に期待

【概要】

二酸化炭素(CO2)の排出を伴わないグリーン水素(注3の製造において水電解の高効率化は喫緊の課題であり、実現のために水電解における電力コストを低減する技術が求められています。電極における反応過電圧は電力コストに直結するため、従来は高効率な貴金属触媒を用いて反応過電圧の低減が試みられてきました。特に酸素発生極における酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction, OER)は過電圧が大きいため、その過電圧低減が特に重要とされています。

東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の藪浩教授(主任研究者、同研究所水素科学GXオープンイノベーションセンター副センター長)らの研究グループは、東北大発スタートアップ企業のAZUL Energy(仙台市、伊藤晃寿社長)、東北大学バイオ創発共創研究所と共同でレドックス種の一つであるハイドロキノン(HQ)を電解液に添加することにより、イリジウム(Ir)などの貴金属を用いずに低過電圧で水素製造が可能な「再生レドックス媒介電解システム(Regenerative Redox Mediated Electrolysis System, RReMES)」の実証に成功しました。

本研究で開発した電解技術は、グリーン水素製造における電力コスト低減に貢献する技術として期待されます。

本研究成果は、7月14日(現地時間)に科学誌Advanced Sustainable Systemsのオンライン速報版に掲載されました。

図1. RReMESの概略図(左)と電解過電圧の時間依存性(右)。右図でHQなしの場合(黒線)は高い水素発生過電圧が生じているが、HQありの場合は大幅に低減した(緑線・赤線)。光照射がない場合は、HQが消費されて途中で過電圧が上昇する(緑線)のに対し、光照射ありの場合は低電圧を保った(赤線)。

【用語解説】

注1. 水電解過電圧
水を電気分解する際に、理論電圧以上に実際にかけなければならない電圧差。

注2. レドックス化合物
電子を受け取ったり(還元)、渡したり(酸化)することで、酸化還元反応に関与できる化合物。

注3. グリーン水素
製造過程でCO2が排出されない最もクリーンな水素。洋上風力などの再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで作られる。これに対し、天然ガスや石炭などの化石燃料を用いて作られ、大量のCO2の大気中への排出を伴う水素をグレー水素と言う。CO2は排出するが、回収したCO2を貯留したり、他の産業プロセスで利用したりする場合はブルー水素と言う。

【論文情報】

タイトル:A Regenerative Redox-Mediated Electrolysis System (RReMES) for Efficient Reduction of Water Electrolysis Overpotentials
著者: Yutaro Hirai, Kosuke Ishibashi, Hiroshi Yabu*
*責任著者:東北大学 材料科学高等研究所 教授 藪浩
掲載誌:Advanced Sustainable Systems
DOI:10.1002/adsu.202500668

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 藪 浩(やぶ ひろし)
TEL: 022-217-5996
Email: hiroshi.yabu.d5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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