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血中濃度に性差のある元素・セレンと鉄代謝の関連性を発見 ICP-MSを用いた網羅的微量元素解析法を確立

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 代謝制御薬学分野
教授 斎藤芳郎

研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 誘導結合プラズマ質量分析法ICP-MS(注1)を用いた網羅的微量元素解析法を確立し、ヒト血漿中の微量元素・金属類を測定しました。
  • 地域住民コホート研究で収集された血液を用い、鉄やセレン、水銀、セレン輸送タンパク質セレノプロテインP(注2)など、血漿中に含まれるレベルに性差のある元素を発見しました。
  • セレノプロテインPが鉄やセレン、ヒ素、水銀、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値、HbA1c値(注3)と相関することを明らかにしました。

【概要】

セレンや亜鉛、鉄などの必須微量元素は、生体の恒常性維持に必須の元素です。それぞれの元素において、欠乏症あるいは過剰症が存在するため、健康状態を維持するためには、最適な範囲にあることが重要です。一方、水銀やヒ素、鉛といった有害金属には、必須微量元素の作用を打ち消し、疾患リスクを増加させる作用が知られています。

東北大学大学院薬学研究科の斎藤芳郎教授、東北メディカルメガバンク機構の山本雅之教授、金沢大学医薬保健研究域医学系の篁俊成教授らの研究グループは、誘導結合プラズマ質量分析法ICP-MSを用いた網羅的微量元素解析法を確立し、ヒト血漿に含まれる必須元素や有害金属14元素を一度に評価する手法を開発しました。また、その増減によって疾患リスクが変化する血漿中のセレン運搬タンパク質セレノプロテインPについても評価を行い、地域住民コホート研究で収集された生化学データ・アンケート結果との多重相関解析を実施した結果、健常人において鉄やセレン、水銀などの元素レベルでは男性の方が高い値を示し、セレノプロテインPにも性差が確認されました。さらに、セレノプロテインPレベルと、鉄やセレン、ヒ素、水銀、ヘマトクリット値、ヘモグロビン値、糖尿病マーカーHbA1c値との相関も明らかとなりました。この結果は、セレンと鉄代謝が密接に関連することを示唆しています。魚介類の摂取頻度と水銀・ヒ素のレベルの相関も示されました。

本成果は7月13日、学術誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1. 本研究の概要

【用語解説】

注1. 誘導結合プラズマ質量分析法ICP-MS (inductively coupled plasma mass spectrometry):高温のアルゴンプラズマで試料をイオン化し、質量に基づいて分離・検出することで、元素の種類と量を測定する。

注2. セレノプロテインP(SeP):必須微量元素セレンを含むタンパク質で、肝臓で主に合成され、血液中に分泌される。分泌されたSePは、各臓器にセレンを運ぶ役割を果たす。これまで、糖尿病患者においてSePが増加し、増加したSeP(過剰SeP)がインスリンの効果を弱めること(インスリン抵抗性)や、インスリンの分泌を抑制し、糖尿病態を悪化することが知られている。

注3. ヘモグロビンA1c(HbA1c)値:過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映する検査値で、糖尿病の診断や血糖コントロールの指標として用いられている。

【論文情報】

タイトル:Gender differences in plasma element concentrations and associations between selenoprotein P and iron metabolism in a community-based cohort study
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 教授 斎藤芳郎
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-10581-2

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
代謝制御薬学分野
教授 斎藤芳郎
TEL:022-795-6870
Email: Yoshiro.saito.a8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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