2025年 | プレスリリース・研究成果
AIを活用し膨大な実験と理論計算のデータを統合した材料マップを開発 ―― 新しい機能性材料開発期間の大幅短縮に期待 ――
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所
特任准教授 橋本 佑介
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 人工知能(AI)を実現する一手法の機械学習を活用して実験データと計算データを融合し、材料の構造類似性をひと目で把握できる「材料マップ」(注1)を構築しました。
- 未知の高性能材料の類似体を迅速に抽出でき、研究者が既存の合成手法を転用して次のターゲット材料を容易に選定することが可能になります。
- 今後、新材料開発期間の大幅な短縮につながることが期待されます。
【概要】
これまで材料開発では、理論計算による予測と実験による検証が分離しており、効率的な材料探索が課題となっていました。
東北大学学際科学フロンティア研究所寄附研究部門「ナノ材料プロセスデータ科学」の 橋本佑介特任准教授と笘居高明教授、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の賈 雪(ジヤ シユエ)助教と李 昊(ハオ リー)教授らの研究グループは、実験と代表的な理論計算の第一原理計算データを統合した大規模データセットにメッセージパッシング型グラフニューラルネットワーク(MPNN)(注2) を適用し、材料の熱電特性と構造類似性を一望できる「材料マップ」の構築に成功しました。マップ上では構造的に近い材料が近接して配置されます。似た構造の材料は似た手法で合成・評価されることが多く、既存の合成手法を生かして次のターゲット材料を選定するときの効率化に貢献します。
このマップを活用することで、実験研究者が未知の高性能材料において構造的に類似するものを短時間で抽出し、既存の合成手法を転用して次のターゲット材料を容易に選定することが可能になります。新材料開発期間の大幅な短縮につながることが期待される成果です。
本研究成果は、2025年7月28日(現地時間)に科学誌APL Machine Learningのオンライン版にて公開されました。

図1. 本研究におけるデータ分析の流れ
実験データと計算データを機械学習を通して融合し、結晶グラフ、深層学習、次元削減などのデータ科学的手法を駆使して、材料マップを構築しました。
【用語解説】
注1. 材料マップ
高次元材料データを 2 次元平面上に投影し、材料間の類似性を直感的に可視化したもの。
注2. メッセージパッシング型グラフニューラルネットワーク(MPNN)
原子をノード、結合をエッジとして表現したグラフ上で、各ノードが隣接ノード・エッジからメッセージを受け取り集約・更新し、材料物性を予測する汎用的グラフニューラルネットワーク手法。
【論文情報】
タイトル:A Materials Map Integrating Experimental and Computational Data via Graph-Based Machine Learning for Enhanced Materials Discovery
著者:Y. Hashimoto*, X. Jia, H. Li, T. Tomai
*責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所 特任准教授 橋本 佑介
掲載誌:APL Machine Learning
DOI: 10.1063/5.0274812
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
特任准教授 橋本 佑介
TEL: 022-795-5630
Email: yusuke.hashimoto.b8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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