2025年 | プレスリリース・研究成果
創薬のカギを握るテルペノイド天然物誘導体の 「自在な」合成法を確立
【本学研究者情報】
〇大学院薬学研究科 合成制御化学分野
教授 岩渕好治
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 免疫系を活性化する珍しい生物活性を示すものの、従来の方法では合成が極めて困難なタイプのクロバン型テルペノイド注1) を一挙に合成する新たな方法を確立しました。
- サンゴから発見された新しいクロバン型テルペノイドであるランフルクロバンE、サリンファセタミドA、サリンファセタミドBを、独自に設計した「汎用性中間体」を活用して合成することが可能となりました。
- 多様な生物活性を有するクロバン型テルペノイドを自在に合成できるようになったことで、創薬研究のさらなる発展が期待されます。
【概要】
自然界がつくり出す有機化合物の中でも、「クロバン型テルペノイド」と呼ばれる一群は、抗炎症作用や神経保護作用など、有用な生物活性をもつことから、医薬品の候補として長く注目されてきました。その一方で、近年サンゴから見つかったランフルクロバンE、サリンファセタミドAおよびBといった化合物は、酸素や窒素などを多く含んだ複雑な構造(高度に酸化された骨格)を持ち、これまでの手法では合成が困難とされてきました。
今回、東北大学大学院薬学研究科の二宮大悟大学院生、長澤翔太助教、岩渕好治教授らの研究グループは、本課題を解決すべく、精密に設計した「汎用性中間体」と呼ばれる分子を起点として、3種の天然物および人工誘導体(人工的に構造を変えた類似化合物)を一挙に合成することに成功しました。
本研究により、「高度に酸化された」クロバン型テルペノイド群を、効率的かつ自在な合成を可能とする新しい戦略が拓かれました。本研究を端緒とした、クロバン型テルペノイドを基軸とした低分子創薬研究の進展が大いに期待されます。
本研究成果は、2025年7月29日付で英国王立化学会の学術誌Chemical Scienceにオンライン掲載されました。

図1. クロバン型テルペノイド
【用語解説】
注1. テルペノイド: 5炭素のイソプレンユニットからなる天然化合物の一群。
ユニークな生物活性を示す場合が多く、医薬品にも広く利用されている。医薬品以外では香料などに用いられる。
【論文情報】
タイトル:Unified Approach to Highly Functionalized Clovane-type Terpenoids: Enantiocontrolled Total Synthesis of Rumphellclovane E, Sarinfacetamides A and B
著者:Daigo Ninomiya, Shota Nagasawa,* Yoshiharu Iwabuchi*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 助教 長澤翔太、教授 岩渕好治
掲載誌:Chemical Science
DOI:10.1039/D5SC04197J
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
助教 長澤翔太、教授 岩渕好治
TEL: 022-795-6847, 6846
Email: shota.nagasawa.d8*tohoku.ac.jp
y-iwabuchi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)