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リサイクルが簡単な電極材料を開発 資源の制約を乗り越えた電池の開発に期待

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 准教授 岡弘樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 親水性ポリアミンに、電荷貯蔵を担うp-ジヒドロキシベンゼン(注1を導入することで、電解質が水溶液である水系電池(注2の電極材料への展開を可能にしました。 
  • 本開発の高分子は、水系電池の材料として高い性能を示し、100℃以下の温和な条件で原料に分解できることを実証しました。
  • 本手法によって、リサイクルが簡単な水系電池の開発ができるようになり、脱炭素社会の実現に大きく貢献できます。

【概要】

可逆的に電荷貯蔵(酸化還元、レドックス)できる有機レドックス高分子(注3は、電池の電極材料として注目されています。特に最近では、安全で環境に優しい水系電池への応用に向けた研究が進められています。しかし、同高分子の多くは疎水性であり、水系電池へと応用するには、親水性を付与する必要があるほか、それらの分解は他の高分子材料と同様に簡単ではありませんでした。

東北大学 多元物質科学研究所の岡 弘樹 准教授と大窪 航平 助教、同大学 大学院工学研究科の北嶋 奨羽 大学院生、日東紡績株式会社の五十嵐 和彦 上席技術統括SVらの共同研究チームは、水に溶かすとプラス電荷を帯びることで高い親水性を示すポリアミンに、簡便な縮合反応(注4を用いて、高い電荷貯蔵能を持つp-ジヒドロキシベンゼンを導入しました。これにより、高い親水性を維持したまま、水系電池の電極材料として常温(25℃)で活用できる有機レドックス高分子を開発しました。また、同高分子が、100℃以下の温和な条件で原料に分解できることを実証しました。 今回の研究により、リサイクルが簡単な水系電池の開発ができるようになり、脱炭素社会の実現に大きく貢献できます。

本成果は、2025年8月26日付けで高分子科学の専門誌Polymer Journalにオンライン掲載され、特集号「Rising Stars-2025-」に選出されました。

図1. リサイクル可能な水系電池の概要図

【用語解説】

注1. ジヒドロキシベンゼン:高い電荷貯蔵能を有する化合物。

注2. 水系電池:構成材料として水を使用した電池。

注3. レドックス高分子:電荷を貯蔵・放出できる高分子。

注4. 縮合反応:官能基をもつ化合物から低分子がとれて新しい結合が生成する反応。

【論文情報】

タイトル:Hydroquinone-Substituted Polyallylamine: Redox Capability for Aqueous Polymer-Air Secondary Batteries and Recyclability
著者:岡弘樹*、北嶋奨羽、大窪航平、丸岡清隆、髙橋勇太、照内洋子、竹内実、五十嵐和彦、笠井均
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 岡弘樹
掲載誌:Polymer Journal
DOI:10.1038/s41428-025-01085-x

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
准教授 岡 弘樹(おか こうき)
TEL: 022-217-5812
Email: oka*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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