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「従来薬では狙えないタンパク質」を標的とする新薬の評価法を確立 ~新技術で薬の働きを可視化し、効果を高める道を開く~

【本学研究者情報】

〇薬学研究科合成制御化学分野 教授 岩渕好治
研究室ウェブサイト

【概要】

愛媛大学先端研究院プロテオサイエンスセンターの山田航大特別研究員、山中聡士特定助教、澤崎達也教授、徳島大学の小迫英尊教授、東北大学の山越博幸助教、岩渕好治教授らの研究グループは、新しいタイプの薬「PROTAC(プロタック)」が細胞の中でどのように働くのかを調べる技術を開発しました。

私たちの体には、がんなどの病気に深く関わりながらも、従来の薬では標的にできない"創薬困難(Undruggable)"なタンパク質が数多く存在します。PROTACは、このようなタンパク質と、「分解の目印」を付ける酵素を近接させることで、標的が細胞内の分解装置へ送られる仕組みを作り出します。これにより、これまで薬では狙えなかったタンパク質も標的にできるようになり、世界中で研究が急速に進んでいます。しかし、PROTACの効き方は複雑で、どのように働いているかを調べることが難しいのが課題でした。

今回、研究チームは独自の「AirID」技術を用いて、PROTACが細胞内で作用したときに生じるタンパク質間相互作用を網羅的に可視化できる新しい評価法を開発しました。これにより、薬の効き方をより詳しく理解でき、他の薬と組み合わせて効果を高める研究につながります。本研究成果は、2025830日付でNature Portfolio発行の学術誌『Communications Biology』に掲載されました。

図1. PROTACが働く仕組み
PROTACは細胞内で標的タンパク質とE3リガーゼの両方に結合し、両者を近接させる。その結果、E3リガーゼによって標的タンパク質に「分解の目印(Ub:ユビキチン)」が付けられ、細胞内の分解装置へと送られる。これにより標的タンパク質が分解されることで、PROTACは薬効を発揮する。

【論文情報】

タイトル: In-cell proximity target validation methods for heterobifunctional molecules with CRBN- or VHL-binder using AirID
(和訳) AirIDを用いたCRBNまたはVHL結合体を有するヘテロバイファンクショナル化合物に対する細胞内近接標的タンパク質探索法
著者: 山田航大、 山中聡士、 山越博幸、 髙山亜紀、 岩渕好治、 小迫英尊*、 澤崎達也*
*共責任著者: 小迫英尊、 澤崎達也
掲載誌: Communications Biology
DOI: 10.1038/s42003-025-08761-x

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 合成制御化学分野
教授 岩渕好治
TEL:022-795-6846
E-mail : yoshiharu.iwabuchi.d8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科・薬学部 総務係
TEL:022-795-6801
E-mail : ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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