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量子もつれ光子ルーターを開発し伝送経路の切り替えを実証 ─量子情報ネットワークへの応用に期待─

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科物理学専攻 教授 金田文寛
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 量子情報処理の情報の基本単位である単一光子の量子ビット(注1や2個以上の光子が相関する量子もつれ(注2光子の伝送経路を、低損失で偏光無依存に切り替えられる光子ルーター動作の実証に成功しました。
  • 新たな結晶配置による電気光学スイッチや変形した干渉計を開発したことで、低損失で光子の偏光状態に依存しない動作を実現しました。
  • このルーター技術は、量子ネットワーク内での量子もつれ光子の高精度な伝送経路切り替えや、全光学的な量子メモリ技術への応用などが期待されます。

【概要】

近年、量子コンピューターや量子暗号通信などの次世代情報技術の研究が活発化しています。これらを実現するためには、量子情報デバイス間をつなぐ量子ネットワークを構築し、光の量子である単一光子や量子もつれ光子の伝送経路を自在に切り替えるルーティング技術が求められます。

東北大学大学院理学研究科の金田文寛教授とPengfei Wang大学院生、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター超伝導ICT研究室の藪野正裕主任研究員らの研究グループは、量子情報を担う量子ビットとして直接利用できる単一光子の偏光状態や量子もつれ状態を、低損失かつ高度に維持しながら伝送経路を切り替えられるルーターの開発に成功しました。このルーターは、偏光状態によらず光子の位相を制御する電気光学素子や、既存の光学干渉計を変形させたユニークな構造をもつ光学干渉計の開発によって実現されました。

本研究成果は国際学術誌Advanced Quantum Technologies に2025年9月3日に掲載されました。

図1. 光子ルーターの概念図

【用語解説】

注1. 量子ビット:量子情報処理の基本の情報単位。従来の情報処理では電圧や光の強さなどをビット状態「0」と「1」に対応させて情報処理をするが、量子情報処理では、それらを2値的な量子状態が担うことで、量子重ねあわせや量子もつれを用いた新たな情報処理が可能となる。

注2. 量子もつれ:複数の量子(本研究では光子の偏光)が互いに密接に結びついている現象。量子が遠隔地にあってもその結びつきは維持される。光子の量子もつれにより、遠隔地の量子デバイスに強い結び付きをもつ量子ネットワークの構築が可能となる。

【論文情報】

タイトル:Low-loss polarization-maintaining router for single and entangled photons at a telecom wavelength
著者: Pengfei Wang, Soyoung Baek, Masahiro Yabuno, Shigehito Miki, Hirotaka Terai, and Fumihiro Kaneda*
*責任著者:東北大学大学院理学研究科物理学専攻 教授 金田文寛
掲載誌:Advanced Quantum Technologies
DOI:10.1002/qute.202500355

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科物理学専攻
教授 金田 文寛(かねだ ふみひろ)
Email:fumihiro.kaneda.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
電話:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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