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二酸化炭素の吸着で非磁石を磁石に変えることに成功 ガス吸着による磁気スイッチ開発に進展

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 宮坂等
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 二酸化炭素の吸着により、磁石ではない物質(常磁性体(注1)から磁石の一種である反強磁性体(注2に変わる多孔性材料の開発に成功しました。逆に二酸化炭素を脱着させると元に戻ります。
  • 二酸化炭素が内包されることにより分子格子が変形され、電子状態が変わることが原因です。
  • 二酸化炭素のように、ガスとして扱える温度が広範で且つ圧力も自由に変えられる非磁性物質(注3により磁気秩序(注4を実現させたのは世界初です。

【概要】

磁石は身の回りでありふれた材料ですが、分子で創ることにより、従来の磁石では実現不可能であった機能性の付加や磁石機能の制御が可能になります。

東北大学金属材料研究所の高坂亘 准教授と宮坂等 教授の研究グループは、武漢大学の張俊 教授および大阪大学大学院基礎工学研究科の北河康隆 教授のグループとの共同研究により、二酸化炭素ガスを吸着させることで、元々は磁石としての性質(注5を持たない常磁性体を、磁気秩序を示す反強磁性体にすることに成功しました(相転移温度62 K)。ある一定以上の磁場を印加することで、一般的な磁石(フェリ磁性体(注6)となり、磁場を取り除いてもその状態を維持します。研究グループは今回に先立ち、今回と同様な材料で二酸化炭素の吸脱着によって磁石になる温度、相転移温度を向上させることに成功しました(2023年11月20日付プレスリリース(参考文献1))。今回はそれに続く成果です。

研究グループはこれまで、今回と同じ材料への有機分子の吸着(注7で、常磁性体からフェリ磁性体や反強磁性体に変換することに成功しています(参考文献2)。また一般的なガス分子を利用したものとしては、酸素や二酸化炭素等の吸脱着を利用した磁石のON-OFFが可能な材料を、これまでの研究で見つけていました(参考文献345)。

今回新たに見つけた「非磁石に一般的な非磁性ガスを吸着させて磁石を創る」例は世界初であり、ガス吸着による磁気制御を可能にするスイッチや化学物質から情報を取り出す変換材料等の応用が考えられます。二酸化炭素はガスとして扱える温度が広範でかつ圧力も自由に変えられる非磁性ガスであるため、吸脱着による物質変換も容易です。

本研究成果は、2023年11月21日付け(現地時間)で科学誌Journal of the American Chemical Societyにオンライン掲載されました。

図. 二酸化炭素(CO2)がないときの磁化変化(黒丸)と二酸化炭素を吸着したときの磁化変化(赤丸)

【用語解説】

注1. 常磁性体:物質の電子スピンがバラバラの方向を向いているために非磁性であるが、磁場を印加すると、その方向に弱く配列する性質を常磁性と言います。常磁性を示す物質を常磁性体といい、常磁性体は、強力な磁石を近づけるとそちらに引き寄せられます。しかし、磁場を取り除くとスピンはまたバラバラの方向を向いてしまうため、常磁性体は、いわゆる磁石としての性質は持ちません。

注2. 反強磁性体:隣接する電子スピン同士が逆方向を向く相互作用(反強磁性的相互作用)が働き互いに打ち消し合う場合には、物質全体としては磁化を持たず、磁気秩序は持っていますが、磁石とはなりません。このような物質のことを反強磁性体といいます。反強磁性体にも磁気相転移温度が存在し、それより高い温度領域では常磁性体となります。

注3. 非磁性物質:不対電子を持たない物質(反磁性体)。一般的なガス分子では、二酸化炭素は非磁性物質であり、酸素は常磁性物質です。

注4. 磁気秩序:常磁性、強磁性、反強磁性、フェリ磁性をはじめとする様々な電子スピンの配列の様式(磁気秩序状態)を総称して磁気相といいます。常磁性は秩序を持たない状態であり、強磁性、反強磁性、フェリ磁性は磁気秩序を持つ状態です。磁石として機能するのは、強磁性、フェリ磁性の磁気秩序状態であり、反強磁性は、通常の意味での磁石としての機能は持たない磁気秩序状態になります。

注5. 磁石としての性質:一般に"磁石"とは、外部磁場が印加されていない時の磁化(= 残留磁化)が0でない物質のことを指します(図3)。我々の身の回りにある"磁石"が、磁場を与えずとも鉄などをくっつけることが出来るのは、残留磁化を持っているためです。

注6. フェリ磁性体:物質中の電子スピン間に磁気的な相互作用が働き、それが三次元的に長距離に及ぶことにより磁石となります。一般的な磁石は通常、強磁性体、あるいはフェリ磁性体のどちらかです。磁石には磁気相転移温度が存在し、それより高い温度領域では常磁性体となります。隣接スピン同士が平行になる相互作用が働いている場合は強磁性体となります。一方、隣接スピン同士が逆方向を向く相互作用が働いている場合でも、スピンの大きさが異なるため、その差分により物質全体としては磁石になる物質をフェリ磁性体と言います。

注7. 有機分子の吸着:本発表と同じ化合物は、ベンゼン、パラトルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタンの溶媒蒸気の吸着により、常磁性体からフェリ磁性体に変換されます。一方、二硫化炭素を吸着すると、反強磁性体に変換されます(参考文献2)。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門
教授 宮坂 等(ミヤサカ ヒトシ)
TEL:022-215-2030
Email:miyasaka*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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