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井上新総長就任のご挨拶

 平成18年7月31日に東北大学総長選考会議議長の小田滋先生から東北大学の第20代目の総長最終候補者に決定した旨の報告を受けましたが、その際責任の重さを実感し、身が引き締まる思いをした事を鮮明に記憶しています。その報告を受けた直後に報道関係者を前にした会見に臨み、

次期総長としての抱負などについて述べさせて頂きました。その後約3ヶ月が経ちましたが、この間、東北大学法人の将来の理想像とそれを具現化するための目標、組織、施策などが常に脳裏に飛び交い、東北大学の最高責任者としての重責を感じ始めて参りました。

 この度の総長就任に当たり、本学の今後の基本方針とそれに基づいた教育、研究、社会貢献などに関する私の基本的考えを述べさせていただき、教職員および関係者の理解を得ることが出来れば幸いと思っております。

 法人化前の大学では、「知の創造体」、「知の継承体」、「知の共同体」として、大学の教育、研究、管理、運営などのすべてが部局では「教授会」を、大学としては「評議会」を最高意思決定機関とする体制を取っていました。しかし、平成16年4月1日から始まった国立大学の法人化後は、大学が「知の創造体」および「知の継承体」であることに変わりはありませんが、「知の共同体」としてのこれまでの基本は「知の経営体」という新しい考えへと変革を迫るものであり、その変革を確実に実践していくことが本学の発展にとって重要な課題となっております。

 この「知の経営体」においては、教員のみならず事務職員、技術職員がイコールパートナー精神の下で本学の同窓生および地域の人々と協調して本学を発展させることが重要であると思っています。このためには、大学の管理、運営面に、教員の外に事務職員が積極的に参画し、貢献することを求めたいと思います。言うまでもありませんが教学面に関する事項については「教育研究評議会」で、また経営面の事項については学外委員が参加した「経営協議会」での審議が最重要であります。こうした審議を受けて事務職員が、最新の情報基盤技術を最大限に活用した事務組織体制の整備を進め、定常的業務の外に、創造的業務にも時間を費やすことが出来る体制を構築し、多くの事務職員が東北大学の戦略企画業務に主体的に参加している意識を涵養することが重要だと考えます。

 教育面では、なにごとにも積極果敢に挑戦する力、基礎学力の習得・努力に基づいた創造力、革新をもたらす飛躍力などを基盤に高い人間力、品格を持った学生の育成を目指し、大学院大学に相応しい6年あるいは9年間一貫のカリキュラムの構築に努めたいと考えております。その際、全学(教養)教育をさらに充実させるための方策 を、海外インターンシップ制度の積極的導入も含めて、早急に構築できるように努めたいと思っています。学生の夢や志を叶えるに相応しい基礎実力を身につける手助けが出来ればと考えております。

 研究面においては、「研究中心大学」として世界のトップレベルの研究拠点を目指すことが不可欠だと考えております。その際、東北大学の将来的な戦略方針の基で特別教育研究経費獲得による運営費交付金の増額を図り、研究・教育基盤を強化発展させたいと考えております。また同時に、競争的資金である科学研究費補助金獲得の増大を目指す外に、ポスト21世紀 COE( グローバル COE) 、トップ30研究拠点形成および振興調整費等の採択率増大に努めると共に、 JST や NEDO 等の独立行政法人、各種の財団および民間企業からの研究助成金獲得の増大 に努め、基礎学術研究と応用展開研究のバランスの取れた発展に努めたいと思います。また、21世紀 COE プログラムに基づいた本学の新しい教育・研究体制として、複眼的視野を持った若手人材の育成を行う国際高等研究教育機構(異分野融合教育を目指す高等研究教育院と異分野融合の若手研究員の育成を目指す高等融合領域研究所から構成)の立ち上げを目指します。その中でも特に医学・生命科学と工学を連携させた新分野の立ち上げを重点的に行うことによって、本学の研究・教育面での特徴を出していこうと思っています。

 これらの教育、研究面の目標達成を通して、自ずと本学から質の高い学生および世界的に通用する研究・教育者の輩出、産学連携・地域連携研究成果の発信と事業化、ベンチャー企業の創始と育成、地域医療貢献等の社会貢献を果たせるものと考えています。

 ところで、これらの目標を確実に実践していくために、役員会による審議・チェック機能と副学長を中心とした業務執行とを区別した体制を取りたいと考えております。そのために、責任の明確化、戦略企画の迅速な作成、調整、実践および各部局との意見の疎通を高めるために、新しい組織運営体として総長室を導入したいと思っています。以下に、11月6日からの新執行体制のメンバーを紹介します。

 常勤理事には、植木俊哉法学研究科長、庄子哲雄理事(留任)、杉山一彦監事および徳重真光理事(留任)の4氏に、非常勤理事には、吉川弘之非常勤理事(留任)、石弘光(前政府税制調査会会長)および細川益男(ホソカワミクロン(株)代表取締役社長)の3氏に、監事には、常勤として岡本宏監事(留任)、非常勤として西川知雄(弁護士、西川総合法律事務所代表)の2氏に、副学長には、荒井克弘教育学研究科長、橋本治理学研究科長、菅村和夫医学研究科長、野家啓一副学長(留任)、渡邊誠歯学研究科長、里見進大学病院長(留任)、北村幸久(国立博物館理事)、萩原久和副学長(留任)、山本嘉則副学長(留任)、大西仁理事の10氏に就任頂くことになっています。なお、北村氏には総長室長を兼務して頂きます。

 これらの各氏は、それぞれの分野を極められ、見識に優れ、人間性豊かで本学を代表されるに相応しい方々です。この執行部メンバーを基幹として、必要に応じて、総長特別補佐、総長特任補佐、事務部の各部長を始めとする教職員の方々に適宜参加協力頂く柔軟で機動性のある新体制を発足させようと思っています。

 開学以来100年間に亘って、脈々と培われてきた本学伝統の「研究第一主義」、「門戸開放主義」、「実学尊重主義」の理念を大切にして、「世界と地域に拓かれた大学」の方針の下で「指導的人材の養成」を目標に、法人化の基本方針である自主・自立・自己責任の特徴を生かして、教育・研究・社会貢献の一層の発展を図り、知の創造・知の経営体として個性輝く東北大学法人の今後の100年の礎を築いていきたく思っています。また、百周年記念の四大事業の完遂、青葉山新キャンパス整備事業の推進と学内施設の整備、第一期中期目標・中期計画の完遂と斬新で特徴ある第二期中期目標・中期計画の構築と遂行等の諸課題にも、積極的に対処したいと思います。

 常勤・非常勤併せて約10000人の本学職員が、イコールパートナー精神の下で各人の職責を今まで以上に果たす気概を高揚させ、かつ一丸となって東北大学法人の総合力を結集し、21世紀にふさわしい飛躍的発展を達成するために、教職員の皆様方のご協力とご支援をお願いして、総長就任の挨拶と致します。

  東北大学総長 井上 明久

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