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 みちのくの春。それは雪が融けることにはじまり、梅が可憐な花をつけ、桜が絢爛たる花を咲かせ、山吹、桃、芝桜が次々に開花していく。まさに命の躍動を感じる季節であります。

 そのみちのくの躍動の春を迎えたこの時に、東北大学生、大学院生として新たな人生の春を迎えられた500余名の新入生諸君に対し、東北大学を代表して心から歓迎の意を表します。また、今日の日に至るまで諸君の勉学を支えられたご家族の方々に対しても祝意を表したいと思います。

 本年は東北大学が明治40年(1907年)に、東京大学、京都大学に次ぐ、日本で3番目の帝国大学として建学されてから100年目にあたります。諸君は、本学の歴史的な年に入学された新入生であり、次の100年の歴史を創造する新しい学生を迎え入れることができたという意味で、今日は東北大学にとっても誠に喜ばしい日であります。

 さて、諸君が入学した東北大学はどういう大学でしょうか。

 本学は、建学以来「研究第一」と「門戸開放」を開学理念に掲げ、我が国で初めて研究大学を標榜した大学です。その名に恥じぬ数々の先駆的な研究成果を挙げ、世界トップレベルの研究と教育を創造してきました。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献してきました。

 1922年に東北大学を訪れた、かのアルバート・アインシュタイン博士は、帰国後「仙台は学術研究に最も向いた都市であり、恐るべき競争相手は東北大学である」と語ったと言われています。東北大学の研究成果は27の文化勲章、49の文化功労者、17の日本学士院恩賜賞、83の日本学士院賞に裏付けられています。最近では遠藤章氏の日本国際賞受賞、田中耕一氏のノーベル化学賞受賞は諸君もよくご存じのことかと思います。自然科学系論文がどれだけ引用されたかという観点から世界の大学の実績を見ると、東北大学は材料科学分野では世界第3 位、物理学では世界第9位、化学では世界第21位と、世界の大学の中で高い評価を受けています。

 私は、昨年11月の総長就任以来、これからの東北大学の進むべき道を構想してきました。いま、人類社会は地球規模で克服すべき様々な複雑かつ困難な課題に直面しています。東北大学は100年という歴史の中で継承してきた知の蓄積と、絶えざる研究・教育の創造を通して、前途に横たわる諸課題に堂々と立ち向かう先導力となる「世界リーディング・ユニバーシティ」として人類社会の発展に貢献していくことを決意するに至りました。

 こうした決意をもってこれからの東北大学について考えると、「Challenge (挑戦)」、「Creation (創造) 」、「Innovation (革新) 」という3つのキーワードを基軸に行動することが重要と考えます。そして核となるのは、これからの人類社会の形成に向けた卓越性の追求をもって取り組む「挑戦」の精神です。

  東北大学は「知の継承体」として、不撓不屈な挑戦の精神を持つ人材を数多く輩出 し、更には国際社会で指導的な役割を果たす人材を各方面に送り出すことによって、 人類社会に対する貢献を果していきます。

  また、東北大学は「知の創造体」として、挑戦の精神をエネルギーに世界トップレベルの知を「創造」し、その知を実際に活用することによって、人類社会に対する貢 献を果していきます。

 そして、本学がどのような目標に向かって、どのような点に留意しつつ進んでいくか。内外に開かれた「知の経営体」として、その目標達成のための戦略を立て、学内外のさまざまな英知を結集して努力していくことにより、本学が培った実力を如何なく発揮し、世界最高水準の研究中心大学として輝かしい前途を切り拓いていけると確信しています。

 「世界リーディング・ユニバーシティ」として人類社会の発展に貢献する道筋として、アクションプランをまとめました。そのアクションプランは本日、世界に向けて発信するものですが、それに先立ち、新入生諸君に表明いたしました。

 人類社会の様々な課題に挑戦する「世界リーディング・ユニバーシティ」になるという目標は、一朝一夕に実現できるものではありません。大学を取り巻く競争環境が絶えず激しく変化することも忘れてはなりません。しかし、これからの進むべき道程を明確にし、東北大学の素晴らしい教職員、学生、そして同窓生が相互に切磋琢磨をしてその力を発揮することで、この目標の達成を目指していきます。諸君のような若い力が加わることによって、更に一層の切磋琢磨が行われるよう、強く期待しております。

 新入生諸君は本日から東北大学の一員になりました。これからの東北大学での勉学と生活について改めて決意を固め、在学中に一人ひとりの天性にあった夢と高い志を探していただくことを期待したいと思います。東北大学は、人文社会科学から自然科学まで幅広い分野において多くの世界的な研究教育者を擁しており、諸君の大きな期待にこたえられるだけの条件を備えているものと我々は自負しております。諸君が前向きに人生を見つめ、日々の努力を重ねるならば、必ずや今後の人生をかけるに値する夢と高い志が見つかるものと信じております。

 もとよりその夢や志の実現はたやすいものではありません。何ごとにも好奇心をもって積極的に取り組んでいくチャレンジ力、基礎的素養を十分に習得した上で知的研鑽・努力を重ねた後に身につくクリエーション力、さらにこれらの力の相乗効果として生み出される新しい知価的成果を人類社会に役立つレベルまで高めるイノベーション力を備えた、すなわち、「高い人間力」をもつことが、諸君の夢や志の実現を可能にし、充実した品格ある人生を送るための基盤となるものと思っています。

 これが今日ここに入学式を迎えた諸君に対する、私の、そして東北大学のメッセージです。

 はじめにも申し上げましたが、本年6月22日をもって、本学は創立100周年を迎えます。本年は創立100周年記念祝賀事業として、6月22日には東北大学の次なる100年のスタートにあたって学章・スクールカラーを制定します。8月には「記念式典」、「100周年記念まつり」のほか、学術講演会や展示など数々の記念行事の企画を予定しています。諸君も、創立100周年という記念すべき区切りの年に入学された学生として、多くの行事に積極的に参加し、多くの方々と東北大学のあるべき姿と進むべき方向について共に語り合っていただきたいと思います。

 新たな東北大学の飛躍の年、ここに一堂に集われた新入生諸君一人ひとりが東北大学に誇りをもち、それぞれの目標に向かって飛躍されることを願ってやみません。最後に、諸君が不断の努力を惜しむことなく、未来を見つめ、何よりも悔いのない学生生活を送られることを心から祈念して、私の式辞といたします。

平成19年4月5日 東北大学総長 井上 明久

(於: 2008.9.25 仙台国際センター)