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「スロースリップ」による水の移動を解明 〜関東地方の地下深くで天然の注水実験か?〜

【要点】

〇沈み込みプレート境界で起きるスロースリップに伴う水の挙動を解明

〇スロースリップ発生時にプレート境界から水が浅部に排出される

〇注水実験と似た現象が関東地方の地下で起きている可能性を示唆

【概要】

東京工業大学 理学院 地球惑星科学系の中島淳一教授と東北大学 大学院理学研究科の内田直希准教授は、茨城県南西部のフィリピン海プレート(用語1)の上部境界周辺で発生する地震の波形を解析することで、プレート境界で約1年周期の「スロースリップ」(ゆっくりすべり、用語2)が発生し、それに伴って水が浅部に排出されていることを明らかにした。

本成果は、スロースリップによってプレート境界の水が移動することを示す初めての観測であり、プレート境界地震(用語3)の発生予測の高度化に向けた極めて重要な成果である。これまでプレート境界地震の発生予測の際にはスロースリップによる応力変化の影響だけが評価されていたが、本成果によって水の排出も考慮する必要があることが明らかになった。

研究成果は4月9日(英国時間)に英国科学誌「Nature Geoscience(ネイチャー・ジオサイエンス)オンライン版」に掲載された。

【用語説明】

(1)フィリピン海プレート:地球の表面を覆っている厚さ50-100 kmほどの10数枚の岩盤(プレート)の一つで、関東地方から西日本、南西諸島の下に年間3-5 cmの速さで沈み込んでいる。

(2)スロースリップ(ゆっくりすべり):数日から数年かけてゆっくりと断層が動く現象。数カ月から数年周期で繰り返すことが多い。

(3)プレート境界地震:大陸プレートとその下に沈み込む海洋プレートの境界で発生する地震。沈み込むプレートに引きずられて生じたひずみを解消する働きがある。1923年関東地震や2011年東北地方太平洋沖地震はプレート境界での巨大地震である。

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図:解析した地震(色は深さ)の分布。

ピンク色の線はフィリピン海プレートの上部境界(数字はプレートの深さ:km)。右図は測線A-Bに沿う断面図。星は繰り返し地震(赤星は解析に用いた繰り返し地震)。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学 大学院理学研究科 准教授
内田直希(うちだ なおき)
E-mail: naoki.uchida.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
TEL: 022-795-3917  FAX: 022-264-3292

取材申し込み先

東北大学 大学院理学研究科・理学部 広報・アウトリーチ支援室
E-mail: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
TEL: 022-795-6708,022-795-5572 FAX: 022-795-5831

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