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抗がん剤の重篤な副作用発現に影響を及ぼす 薬物代謝酵素の遺伝的特性を解明

【発表のポイント】

  • これまで、日本人集団において、5-フルオロウラシル(5-FU)系抗がん剤による副作用発現の遺伝的個人差の原因は不明でした。
  • 東北メディカル・メガバンク機構が構築した「全ゲノム※1リファレンスパネル」を活用して、5-FU系抗がん剤を生体内で分解する薬物代謝酵素 DPD の機能低下を起こす DPYD※2 遺伝子多型※311種を特定しました。
  • 今回特定した遺伝子多型を有する場合、酵素機能が低下するために、5-FU系抗がん剤によって重篤な副作用が発現する可能性があります。遺伝子多型を事前に検査することで、重篤な副作用を回避できるようになることが期待されます。

【概要】

東北大学大学院薬学研究科の平塚真弘准教授(生活習慣病治療薬学分野、東北メディカル・メガバンク機構、東北大学病院兼任)、菱沼英史助教(現・東北メディカル・メガバンク機構、未来型医療創成センター)、山本雅之教授(東北メディカル・メガバンク機構 機構長)らは、5-FU系抗がん剤の代謝酵素について、日本人集団に特異的な遺伝子多型が酵素機能に与える影響とそのメカニズムを解明しました。

これまで、5-FU系抗がん剤の分解代謝酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)の遺伝子DPYDについて、重篤な副作用発現を予測する遺伝子多型マーカーが、欧米の先行研究で数種類報告されていました。しかし、それらの遺伝子多型には民族集団差があり、日本人を初めとする東アジア人集団では、5-FU系抗がん剤の副作用発現を予測できる遺伝子多型マーカーがありませんでした。近年、東北メディカル・メガバンク機構による大規模な日本人集団の全ゲノム解析によって、頻度が低いために、これまで見落とされてきた遺伝子多型が数多く同定されており、これらの低頻度遺伝子多型の中に日本人集団特有の副作用発現予測遺伝子多型マーカーが存在する可能性があります。

本研究では日本人1,070人の全ゲノム解析で同定された21種類のDPYD遺伝子多型がDPD酵素の機能に与える影響を、遺伝子組み換え酵素を用いて網羅的に解析し、11種の遺伝子多型で酵素機能が低下することを明らかにしました。

本研究の成果は5-FU系抗がん剤で重篤な副作用が発現する可能性が高い遺伝子多型を有している患者を特定する「未来型医療」を展開する上で極めて重要な情報となることが期待できます (図1)。

【用語説明】

※1 ゲノム 個体が持つDNAのすべての遺伝情報。また、その情報が全て網羅されていることを強調して「全ゲノム」という。1,000人以上の全ゲノム解析情報をもとに、日本人集団において参照(リファレンス)となる配列情報をまとめたものを全ゲノムリファレンスパネルと呼んでいる。
※2 DPYD dihydropyrimidine dehydrogenase(ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ)の遺伝子。ウラシルやチミンを分解する酵素。
※3 遺伝子多型 遺伝子を構成しているDNA配列の個体差。

図1

詳細(プレスリリース本文)PDF【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科生活習慣病治療薬学分野
准教授 平塚 真弘(ひらつか まさひろ)
電話番号、ファクス:022-717-7049
Eメール:mhira*m.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道担当)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
(東北大学未来型医療創成センター 東北大学病院 兼務)
長神 風二(ながみ ふうじ)
電話番号:022-717-7908
ファクス:022-717-7923
Eメール:f-nagami*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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