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故障した葉緑体を取り除く植物オートファジーの駆動プロセスを解明

【発表のポイント】

  • 植物体内で光合成を行う「葉緑体」が、太陽光によるダメージを受けた植物体内で積極的に取り壊される現象を見出していたが、その駆動プロセスは不明であった。
  • 光ストレスによる膜の傷で大きく膨張してしまった葉緑体だけが選び取られ除去される新しいオートファジー1)のプロセスを発見した。
  • 今後、オートファジーが膨張した葉緑体を選別するメカニズムを解明することで、作物の葉緑体の新陳代謝を効率化し生産性やストレス耐性の改善を目指す新しい研究が発展する可能性がある。

【概要】

オートファジーは、生物が自らの細胞内部の成分を消化するための機構です。東北大学学際科学フロンティア研究所の泉 正範 (いずみまさのり) 助教、同大学大学院生命科学研究科の日出間純(ひでまじゅん)准教授、大学院生の中村咲耶(なかむらさくや)氏、同大学大学院農学研究科の石田宏幸(いしだひろゆき)准教授、岡山大学資源植物科学研究所の坂本 亘(さかもとわたる)教授のグループは、研究用モデル植物であるシロイヌナズナに強い光ストレスを与えると、膜の傷を蓄積した一部の葉緑体が大きく膨張し(図1)、そのような異常葉緑体だけがオートファジーに選び取られ除去されるプロセスを解明しました。本成果をさらに発展させることで、植物体内での葉緑体の新陳代謝をコントロールし作物の生産性やストレス耐性を改善しようとする新たな応用研究の実現が期待できます。本成果は、米国植物生理学会誌Plant Physiology電子版に5月10日に掲載されました。

図1. 膨張した葉緑体の観察画像
通常の葉緑体は楕円型を示す (写真左) が、光ストレスを受けた葉緑体は大きく膨張した形態を示す (写真右)。

【用語説明】

1) オートファジー:植物や動物、酵母といった「真核生物」が広く持っている機構で、細胞内成分の一部を二重膜で取り囲むことで隔離し、その内容物を細胞内のごみ処理場となる部位(植物・酵母では液胞、動物ではリソソーム)に運び、細かく分解するための機構。二重膜小胞が分解物を運ぶ過程がマクロオートファジーと呼ばれるのに対し、液胞やリソソームの膜が分解物を取り入れる過程はミクロオートファジーと大別される。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 泉 正範 (いずみ まさのり)
電話番号:022-217-5745  Eメール:m-izumi*ige.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
特任准教授(URA) 鈴木 一行 (すずき かずゆき)
電話番号:022-795-4353  Eメール:suzukik*fris.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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