本文へ
ここから本文です

世界初の体外診断用医薬品の開発成功につながるチオプリン製剤の重篤な副作用を予測する日本人に最も適切な遺伝的マーカーを同定

【発表のポイント】

  • 東北大学病院 消化器内科 角田洋一助教らの研究グループは、炎症性腸疾患注1、白血病注2、リウマチ性疾患、臓器移植後の治療におけるチオプリン製剤注3の重篤な副作用を予測する、日本人に最も適切な遺伝的マーカーを探索するため、全国32施設による多施設共同研究にて収集された2,630人の炎症性腸疾患の患者DNAを解析し、NUDT15(Nudix Hydrolase 15)遺伝子のコドン注4139が最も適切な遺伝的マーカーであることを示した(参考文献1)。
  • 本成果は、科学雑誌『Journal of Gastroenterology』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(6月19日)に公開された。
  • NUDT15遺伝子のコドン139の遺伝子多型注5を検出するキット(製品名:MEBRIGHT NUDT15 キット)を株式会社医学生物学研究所と共同開発し、世界で初めて体外診断用医薬品として製造販売承認(平成30年4月6日)を取得した。本キットの発売は平成30年7月2日を予定(図1, 2)。
  • 本研究は国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)のゲノム創薬基盤推進研究事業「チオプリン不耐例を判別するNUDT15 R139C遺伝子多型検査キットの開発を軸とした炎症性腸疾患におけるゲノム実用化フレームワークの確立」(以下、本研究課題)において行われた。

図1. 本研究課題の分担研究プロジェクトの紹介

図2. キットの開発と体外診断用医薬品

【用語説明】

注1.炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD):
炎症性腸疾患は主に潰瘍性大腸炎とクローン病の二つの疾患からなる、大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍が生じる原因不明の難治性炎症性腸管障害です。慢性的あるいは寛解と再燃を繰り返す疾患であり、治療では速やかな寛解導入療法と寛解の維持療法が重要となります。

注2.白血病:
白血病は急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病に代表される血液のがんであり、血液細胞ががん化し骨髄内で増殖することで正常な血液細胞が減少し、免疫機能の低下、出血、貧血などの症状が現れる疾患です。

注3.チオプリン製剤
日本国内で使用されているチオプリン製剤は、アザチオプリンとメルカプトプリン水和物散が存在します。チオプリン製剤は生体内で代謝され、活性型分子(TGTPおよびTdGTP)となって効能・効果を発揮します。NUDT15はチオプリン製剤の代謝関連酵素として、活性型分子の脱リン酸化に関与しています。

注4.コドン:
 タンパク質を構成している20種類のアミノ酸に対応する、3個1組の塩基配列のことを言います。1種類のアミノ酸を指定するコドンはアミノ酸の種類によって複数存在するものもあり、生体内での翻訳のステップでは1つのコドンから1つのアミノ酸が合成されます。

注5.遺伝子多型:
遺伝子を構成しているDNA配列でみられる個人差であり、一般的に人口の1%以上の頻度で存在するものと定義されます。遺伝子多型によって遺伝子の機能が変化する場合があり、病気との関係や薬の効果予測など、臨床に役立つ遺伝的マーカーへの利用が期待されています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院 消化器内科
助教 角田 洋一(かくた よういち)
電話番号:022-717-7171
Eメール:ykakuta*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院 広報室
電話番号:022-717-7149
FAX番号:022-717-8931
Eメール:pr*hosp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ