2018年 | プレスリリース・研究成果
卵巣がんの薬剤耐性に関与する新たな標的分子の発見 〜TIE-1の働きを抑えると抗がん剤の効果が増強される〜
【研究のポイント】
- 卵巣がんに対して、一般に、プラチナ製剤注1とタキサン製剤注2を併用した化学療法が行われているが、薬剤耐性を持つがんが現れることが問題となっている。
- プラチナ製剤に耐性を示す卵巣がんに対する治療標的分子の候補として TIE-1タンパク質注3を同定した。
- TIE-1タンパク質を標的とすることで、薬剤耐性卵巣がんに対する新しい抗がん剤を開発できると期待される。
【研究概要】
東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野の八重樫伸生(やえがし のぶお)教授と摂南大学薬学部北谷和之(きたたに かずゆき)講師のグループは、卵巣がんのプラチナ製剤(シスプラチン)感受性に関与する新規タンパク質 TIE-1の作用機構を報告しました。本研究は、卵巣がんに対する新たな治療標的分子を明らかにした重要な報告であり、卵巣がん治療の発展に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2018年9月4日に Scientific Reports 誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。
【用語説明】
注1. プラチナ製剤:シスプラチンなど構造にプラチナ(白金)を含む抗がん剤の総称。DNAに結合することで複製を阻害し、がん細胞の増殖を抑える。
注2. タキサン製剤:細胞分裂を阻害する抗がん剤の一つ。
注3. TIE-1(Tyrosine kinase with immunoglobulin-like and EGF-like domains 1)タンパク質:細胞の表面に存在する、外部からの刺激を細胞内に伝えるタンパク質。
図1. シスプラチンはDNAに結合してDNA複製を阻害し、がん細胞を殺す。
図2. TIE-1タンパク質は、遺伝子の機能をオンにするスイッチ(転写因子KLF5)を介してDNAの損傷を修復するタンパク質(XPC)を活性化し、DNAに結合したシスプラチンを積極的に除去することでシスプラチンの抗がん剤としての効果を抑える。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野
助教 石橋 ますみ
電話番号: 022-717-7251
Eメール: masumi.ishibashi.d6*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(報道に関すること) 東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号: 022-717-7891
FAX番号: 022-717-8187
Eメール: pr-office*med.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)