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スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証 〜ミクロな量子力学からマクロな機械運動を生み出す新手法〜

【発表のポイント】

  • スピン流が運ぶミクロな回転がマクロな動力となることを実証した。
  • 磁性体で作製したマイクロデバイスにスピン流を注入した結果、電流による影響を排除した純粋なスピン流のみでデバイスを振動させることに成功した。
  • 電気配線なしで振動を起こせるため、配線が困難なマイクロ機械デバイスの動力に応用できる可能性がある。

【概要】

JST戦略的創造研究推進事業において、ERATO齊藤スピン量子整流プロジェクトの針井一哉研究員(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 特定課題推進員)、齊藤英治研究総括(研究当時 東北大学 金属材料研究所・材料科学高等研究所教授、現東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻教授兼任)、前川禎通グループリーダー(理化学研究所 創発物性科学研究センター 上級研究員)らの研究グループは、マイクロメートルスケールの磁性絶縁片持ち梁(カンチレバー)注1)を作製し、そこに磁気の流れであるスピン流注2)を注入することでカンチレバーを振動させることに成功しました。カンチレバーは絶縁体なので、電流は一切流れず、磁気の流れであるスピン流だけを流すことができます。この結果により、スピン流が運ぶミクロな量子力学的回転がマクロな動力となることが実証されました。

今回作製した素子では、加熱によってスピン流を注入するため、カンチレバー上に電気配線することなく振動を起こすことができます。そのため、本手法は配線が困難なマイクロ機械デバイスの動力などに応用できる可能性があります。

本成果は2019年6月13日(英国時間)「Nature Communications」オンライン版で公開されます。

図1:実験のセットアップ図
イットリウム鉄ガーネット(YIG:黄色部分。並んでいる紫の矢印がスピン)により構成されるカンチレバーの根元部分に、スピン流検出用の白金(Pt:茶色部分)からなる熱源(ヒーター)を形成した。ヒーターに電流を加えて熱流を発生させることによりカンチレバー先端方向(x方向)に向かってスピン流(紫矢印の振動)を引き起こし、カンチレバー先端を上下矢印の方向(z方向)に振動させる。

【用語解説】

注1) 片持ち梁(カンチレバー)
板飛び込みの飛び板のように、一端を固定し、もう一端を固定せず自由にしている構造体のこと。

注2) スピン流
スピン角運動量の流れ。例えば電子は電気的な自由度である電荷と、磁気的な自由度であるスピン角運動量を持っており、前者の流れを電流、後者の流れをスピン流と呼ぶ。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
ERATO 齊藤スピン量子整流プロジェクト 研究総括
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 教授
東北大学 材料科学高等研究所(AIMR)/金属材料研究所 教授
齊藤 英治(サイトウ エイジ)
Tel:022-217-6238 Fax:022-217-6395
E-mail:eizi*ap.t.u-tokyo.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
Tel:022-215-2144
E-mail:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学材料科学高等研究所 広報・アウトリーチオフィス
Tel:022-217-6146 Fax:022-217-5129
E-mail:aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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