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半導体原子シートの新たな合成機構を解明 ~次世代フレキシブル光電子デバイス実現に期待~

【ポイント】

  • 特殊環境下で成長する半導体原子シートの成長初期過程はこれまで未解明だった。
  • 独自に開発したその場観察合成手法を用いて、液体状態の前駆体が関与した新たな半導体原子シートの合成機構を発見した。
  • 今回発見した合成手法にならって条件を最適化し、単結晶半導体原子シートの大規模集積化合成に成功した。今後半導体原子シートを活用したさまざまなフレキシブルデバイスへの応用が期待される。

JST 戦略的創造研究推進事業において、東北大学 大学院工学研究科 電子工学専攻の加藤 俊顕 准教授と金子 俊郎 教授らは、原子オーダーの厚みを持つ半導体原子シートである遷移金属ダイカルコゲナイド(Transition Metal Dichalcodenides:TMD)注1)に関する新たな合成機構の解明に成功しました。

特殊環境下で成長するTMDは、成長過程の様子を直接観測することが困難なため、成長初期過程が未解明であり、高品質なTMD合成に向け詳細な合成機構の解明が望まれていました。

本研究グループは、腐食性ガスが存在する約800℃の高温特殊雰囲気下でTMDが成長する様子をリアルタイムで光学像として観測できる、その場観察合成手法注2)を開発しました。さらに結晶成長時の前駆体注3)拡散を制御する機構をあらかじめ合成基板上に作り込み、成長前駆体が従来の半導体材料に比べ、約100倍以上の距離を拡散することを明らかにしました。また液滴状態の前駆体の関与によって核発生が生じることも明らかにしました。さらに本手法を活用し、実用スケールの基板上に3万5千個以上の単層単結晶原子シートを大規模集積化合成することにも成功しました(図1)。

本研究成果を活用することで、原子オーダー注4)の究極の薄さを持つ半導体原子シートの大規模集積化合成が可能となり、次世代フレキシブルエレクトロニクス分野での実用化が期待されます。

本研究成果は、2019年9月10日(英国夏時間)に英国科学誌「Scientific Reports」のオンライン版で公開されました。

図1:約3万5千個の単層結晶WSが集積化合成された基板写真(左)と単層結晶WS の構造模式図(右) 。

【用語解説】

注1)遷移金属ダイカルコゲナイド(Transition Metal Dichalcodenides:TMD)
グラフェンと類似の原子層物質。遷移金属がカルコゲン原子に挟まれた構造を持つ。グラフェンは金属的伝導特性を示すが、TMDはバンドギャップを持つ半導体特性を示ことから半導体デバイス分野への応用が期待されている。

注2)その場観察合成手法
合成時の様子をリアルタイムでモニターできる結晶成長手法。

注3)前駆体 
結晶成長の原料。結晶に取り込まれて、最終的にその一部あるいは全体が結晶を構成する要素となる。

注4)原子オーダー
原子1個は約数オングストローム(1オングストロームは100億分の1メートル)。1~数個程度の原子が集まった大きさを意味する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【研究に関すること】
加藤 俊顕(カトウ トシアキ)
東北大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 准教授
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
Tel/Fax:022-795-7046
E-mail:kato12@ecei.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

【報道担当】
東北大学 大学院工学研究科 情報広報室
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-04
Tel:022-795-5898
E-mail:eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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