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人類は不安やうつ傾向が高まる方向に進化した可能性を示唆 VMAT1遺伝子変異の機能変化の解析から

【発表のポイント】

  • モノアミン神経伝達物質*1の輸送に関わるVMAT1遺伝子の変異は、私たちの性格や個性に影響を与えることが報告されています。
  • VMAT1遺伝子には、人類系統特異的な2つのアミノ酸置換(130Glu人Glyおよび136Asn人類系統)が生じており、これらは人類の進化過程で自然選択を受けてきたと考えられます。
  • 本研究では、人類の進化過程で生じた可能性のある5つのVMAT1タンパク質を人工的に再現し、その神経伝達物質の取り込みを可視化することで、人類の進化過程におけるVMAT1遺伝子の機能的変化を明らかにしました。
  • VMAT1タンパク質の神経伝達物質の取り込みは、ヒトの進化過程で減少したことが明らかとなりました。
  • 先行研究と合わせて考えると、人類進化の初期において不安やうつ傾向が高まる方向に進化した可能性が示唆されました。

【概要】

東北大学大学院生命科学研究科の佐藤大気(博士後期課程学生)と永井友朗助教(研究当時、現福島県立医科大学助教)、大橋一正教授、河田雅圭教授らは、発現ベクターへの人工的な変異導入と蛍光神経伝達物質を用いて、神経伝達物質の輸送に関わるVMAT1遺伝子が人類の進化過程で経た機能的変化を明らかにしました。これは、人類の進化過程において、不安やうつを感じやすい方向に進化した可能性を示す重要な報告であり、私たちの性格や精神疾患の進化的意義について示唆を与える研究成果です。本研究結果は、12月2日付でBMC Evolutionary Biology誌(電子版)に掲載されました。

図1. VMAT1(小胞モノアミントランスポーター1)の模式図と遺伝子配列の進化。神経細胞内でシナプス小胞にセロトニンやドーパミンといったモノアミン神経伝達物質を蓄える働きを持つ。人類の進化過程で130番目と136番目のアミノ酸座位に、それぞれグルタミン酸(Glu)からグリシン(Gly)、アスパラギン(Asn)からスレオニン(Thr)へ置換が生じている。

【用語解説】

*1 モノアミン神経伝達物質
アミノ基を一個だけ含む神経伝達物質の総称であり、セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンなどが含まれる。そのうち、VMAT1はヒスタミン以外を輸送し、特にセロトニンの輸送効率が高いことが知られている。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 河田 雅圭 (かわた まさかど)
電話番号:022-795-6688
Eメール:kawata*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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