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若年性膵炎の新しい原因遺伝子を発見 カルシウムチャネルが膵臓を守る

【発表のポイント】

  • 若年性に発症する膵炎の原因として、カルシウムを選択的に透過する膜タンパク質TRPV6遺伝子の変異を初めて発見した。
  • TRPV6の機能が失われる遺伝子の変異は、日本人のみならずフランス人、ドイツ人の若年性膵炎患者でも高い頻度で認められた。
  • 本研究は膵炎の病態解明に貢献するのみならず、新たな膵炎の治療標的開発につながると期待される。

【概要】

東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の正宗淳(まさむねあつし)教授と京都大学、ドイツミュンヘン工科大学、フランスの西ブルターニュ大学らの国際共同研究グループは、若年性に発症する膵炎の原因として、カルシウムを選択的に透過する膜タンパク質であるカルシウムチャネルTRPV6(ティー・アール・ピー・ブイ6)遺伝子の変異を世界で初めて発見しました。

研究グループは次世代シーケンサー注1を用いたゲノム配列の網羅的解析により、膵炎患者にTRPV6遺伝子のde novo突然変異注2を同定しました。さらに、TRPV6の機能が失われる遺伝子変異が、若年性の膵炎に高頻度で認められることを日本人、フランス人、ドイツ人患者の遺伝子解析により明らかにするとともに、同遺伝子の機能が働かなくなった変異マウスでは、膵炎が悪化することを見出しました。

本研究はTRPV6 遺伝子変異が若年性膵炎の原因であることのみならず、カルシウムチャネルが膵炎に対する防御機構として働いていることを初めて明らかにしました。この発見によって、膵炎の病態解明と新しい治療法の開発が期待されます。

本研究成果は、米国消化器病学会の機関誌 Gastroenterology誌(電子版)に、2020年1月10日米国東海岸時間午前10時(日本時間2020年1月11日午前0時)に掲載されました。

図1.慢性膵炎患者における遺伝子異常。膵消化酵素トリプシノーゲン遺伝子(PRSS1)とトリプシンの作用を阻害する膵分泌性トリプシン阻害因子遺伝子(SPINK1)の異常が主であるが、原因不明の特発性膵炎の3/4、遺伝性膵炎の1/4の家系では既知の膵炎関連遺伝子異常は認められない。

【用語解説】

注1. 次世代シーケンサー:遺伝子の塩基配列を大量に高速に読み出せる機器。ヒトゲノムの全塩基配列を数日〜1週間程度で決定することができる

注2. de novo突然変異:親から受け継いだ変異ではなく,ある個体において新しく発生した突然変異のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野
教授 正宗 淳 (まさむね あつし)
電話番号:022-717-7171
Eメール:amasamune*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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