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超高密度金属ガラスの高圧熱処理合成の実現 -ランダム構造・ガラス状態のさらなる可能性の探求-

【発表のポイント】

  • 金属ガラスに高圧熱処理を施した試料が超高密度状態にあり、またそれが優れた機械的特性を有することを見出しました。
  • 常圧での熱処理を通じた従来手法ではその形成が難しいと考えられ、ランダム構造・ガラス状態の発現領域を拡大しました。
  • 新たに創製された「未見のガラス」の詳細な評価を通じて、今後、従来にない特異な構造・状態が解明される可能性が期待されます。

【概要】

東北大学学際科学フロンティア研究所の山田類助教、才田淳治教授らは、物質・材料研究機構(NIMS)の柴崎裕樹研究員らとの共同研究において、Zr50Cu40Al10金属ガラス※1に高圧熱処理※2を施し、回収したバルク試料の諸特性評価を行ったところ、超高密度のアモルファス状態※3が試料内部に形成されていることを明らかにしました。形成された試料の密度は、金属ガラス内に微細な結晶が部分的に析出した試料よりも依然高く、またそれが、優れた機械的特性を有していることが分かりました。今回の研究では、内部組織観察にX線、高分解能透過型電子顕微鏡観察を、また特性評価に、熱分析、密度測定、電気抵抗測定、破壊試験を行い、それらを通じて、「未見のガラス」の創製が予見されました。今後、形成された試料のガラス状態やランダム構造を詳細に評価することで、これまでに未観測の特異な状態が内部に形成されている可能性が考えられ、ガラスの学術研究に大きな知見を与えるものと考えられます。

本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業基盤研究[課題番号18H03829]、の支援を受けて実施されたもので、科学雑誌「NPG Asia Materials」に令和元年12月6日に掲載されました。

【用語解説】

※1 金属ガラス
ある種の合金を液体状態に戻しそこから急冷を施すと、液体のランダム構造を室温にて凍結した状態が達成され、金属ガラスとなります。金属ガラスは室温では優れた強度特性を示し、またガラス加工が可能な温度域(過冷却液体温度域)では優れた精密成型性を示すことから、その応用が大いに期待されています。

※2 高圧熱処理
大気圧である1気圧の数千~数万倍(GPaオーダー)程度の圧力を試料にかけ、同時に熱処理を施すプロセスのことを言います。物質科学においては材料創製の観点でその技術が使用されています。

※3 アモルファス状態
通常の結晶金属は、構成する原子が長範囲で周期的に配列しており、結晶構造を有しています。一方、構成原子が整然と配列せず、ランダムに配置している状態をアモルファス状態と言います。近年では、短範囲や中範囲に原子配列の規則性が有る場合にも、長範囲の規則性を有していないという意味でアモルファス状態という言葉を使用することもあります。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
助教 山田 類
東北大学学際科学フロンティア研究所 
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話: 022-795-4488
E-mail: rui-yamada*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

教授 才田淳治
東北大学学際科学フロンティア研究所
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話: 022-795-5752
E-mail: jsaida*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
URA 鈴木 一行
東北大学学際科学フロンティア研究所
仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
電話: 022-795-4353
E-mail: suzukik*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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