本文へ
ここから本文です

極性超伝導体における巨大整流特性の発見 ―超伝導整流性の起源解明に新たな一歩―

【発表のポイント】

  • 空間反転対称性の破れた極性構造(注1)を持つ2次元超伝導体において、強大な整流特性(注2)を発見。
  • 微視的機構を解明し、2種類の異なる起源の超伝導整流特性が存在することを発見。
  • 本研究成果が、極性構造を有する2次元電子系の新機能を開拓すると同時に、空間反転対称性の破れた超伝導体における新奇輸送特性の新たな知見となることに期待。

【発表概要】

東京大学大学院工学系研究科の板橋勇輝大学院生、同研究科物理工学専攻の井手上敏也助教、岩佐義宏教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)らの研究グループは、理化学研究所や東北大学金属材料科学研究所のグループと共同で、電気二重層トランジスタ(EDLT)構造(注3)による界面電場によって極性構造を持つ2次元超伝導体であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)が、磁場を印加した状況下で巨大な整流特性を示すことを発見しました。

空間反転対称性の破れた物質において実現する、半導体p-n接合を必要としない物質固有の整流特性は、これまで常伝導体と超伝導体においてそれぞれ個別に報告されてきたが、本研究で初めて同一の物質における常伝導状態および超伝導状態での整流性の観測に成功し、超伝導状態において整流作用が常伝導状態の1,000,000倍増大することを発見した。さらに、超伝導整流特性の詳細な温度依存性を調べ、2種類の異なる起源の超伝導整流特性が存在していることを明らかにしました。

本研究成果は、界面において空間反転対称性の破れた極性構造を有する2次元電子系の新たな機能性の開拓を推進するだけではなく、一般の空間反転対称性の破れた超伝導体における新規輸送現象の新たな知見となるものと期待されます。

本研究成果は、米国科学雑誌『Science Advances』(3月27日アメリカ東部夏時間)に掲載されました。

図1. SrTiO3-EDLTの模式図(A)及び整流特性の模式図(B)

【用語解説】

注1: 極性構造
電場の印加や分子・結晶構造に起因して、分子や結晶内に電気的な偏りが生じている構造。

注2: 整流特性
電流を正方向に流す場合と負方向へ流す場合で電気伝導特性が異なる現象。p型半導体と n 型半導体を接合した ダイオード素子で実現することがよく知られているが、近年そのような半導体p-n接合が無くとも、空間反転対称性の破れた結晶において物質固有の整流特性が生じることが明らかとなり、さまざまな物質での実証や機構解明が進んできている。

注3: 電気二重層トランジスタ(EDLT)構造
印加した電場によって電流の流れ易さを調節できる電界効果トランジスタ(FET)の絶縁層をイオン液体と呼ばれる、分子量の大きな塩(えん)で構成される液体に置き換えたトランジスタ(図 1A 参照)。イオンの半径程度という非常に小さい距離に電圧がかかるため、高電場が印加され、通常のFETと比べて10倍以上の高キャリアを界面に誘起することが可能である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所 准教授
野島 勉
Tel:022-215-2167
E-mail:nojima*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
冨松美沙
Tel:022-215-2144 
E-mail:pro-adm*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ