本文へ
ここから本文です

指先から見えた微小血管狭心症患者の新たな病態 - 全身の微小血管の機能障害を反映 -

【研究のポイント】

  • 冠動脈に狭窄などの明らかな異常が観察されないにもかかわらず、狭心痛によって生活の質 (QOL) が低下している患者が一定数いる。
  • 近年、冠攣縮性狭心症注1や微小血管狭心症注2で代表される冠動脈機能異常がその原因として注目されているが、詳しい病態は明らかにされていない。
  • 微小血管狭心症患者における指先の細い動脈(指尖細動脈) において、主要な内皮由来血管弛緩因子注3である一酸化窒素 (NO)と内皮由来過分極因子(EDHF)を介した血管拡張反応が顕著に低下していることを世界で初めて明らかにした。

【研究概要】

冠攣縮性狭心症および微小血管狭心症は、それぞれ、心臓表面の太い動脈冠動脈および心筋内に入り込む微小な動脈(微小冠動脈)の機能異常で生じることが知られています。両疾患とも末梢の血管にも異常があり、合併症の危険や治療経過への悪影響が懸念されます。しかし、冠攣縮性狭心症、微小血管狭心症患者における末梢血管機能異常の原因は未だ十分には解明されていませんでした。

東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授らの研究グループは、微小血管狭心症患者で指尖細動脈における血管拡張因子を介した内皮依存性拡張反応が著明に低下しており、末梢微小血管障害を起こしていることを明らかにしました 。

本研究は、微小血管狭心症患者における末梢微小血管の内皮機能障害を世界で初めて明らかにした重要な報告であり、微小血管狭心症患者に対する新たな治療方法への応用へとつながると期待されます。

本研究結果は2020年4月2日に、米国心臓協会の学会誌であるArteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 誌にオンライン掲載されました。

【用語解説】

注1. 冠攣縮性狭心症:心臓表面の動脈(冠動脈)が一過性に攣縮(痙攣して細くなること)することで狭心症の症状を生じる病気。多くが安静時、特に夜間から早朝に発作が起きる。薬剤で人為的に冠攣縮を誘発する試験(アセチルコリン負荷冠攣縮誘発試験)や自然発作によって診断がなされる。

注2. 微小血管狭心症:冠微小血管における一過性の攣縮や拡張障害により、心筋の酸素需要に見合う十分な血流が伴わず心筋虚血が生じる病気。

注3. 内皮依存性拡張因子:血管内皮細胞より放出される血管を拡張させ血管抵抗を低下させる因子。

詳細(プレスリリース本文)※2020年4月17日に訂正版へ差替PDF

※2頁目の下から5行目を以下のとおり訂正いたしました。(2020年4月17日)

<訂正前>

ニトロプルシド

<訂正後>

ニトログリセリン

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学
教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
(現職:国際医療福祉大学 副大学院長)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

このページの先頭へ