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収縮力の保たれた心不全に対する世界初の超音波治療の開発 - 急増する心不全に対する薬物を使用しない革新的治療法 -

【発表のポイント】

  • 心不全は先進諸国における主要な死因となっており、なかでも、心臓の収縮力(左室駆出率注1)の保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)が世界的に急増していることが報告されている。
  • HFpEFの予後を改善させる有効な薬剤は未だ開発されておらず、効果的な治療の開発が世界的に急務となっている。
  • 低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)注2治療が、HFpEFに対し、有効かつ安全であることを動物モデルにおいて世界で初めて明らかにした。

【概要】

心不全には、心臓の収縮力(ポンプ機能、左室駆出率)が低下した心不全(HFrEF)と保たれた心不全(HFpEF)の2つのタイプがあり、近年、後者のHFpEFの急増が世界中で問題となっています。しかし、HFrEFに対する薬剤は数多く開発されましたが、HFpEFに有効な薬剤はまだ開発されておらず、この点でも世界的に大きな問題となっています。東北大学大学院 医学系研究科 循環器内科学分野の下川 宏明客員教授らの研究グループは、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)注2 がマウスのHFpEFモデルにおいて有効かつ安全であることを示し、その詳細な作用機序を明らかにしました。本研究は、未だ有効な治療法が開発されていないヒトのHFpEFに対してLIPUS治療が有効である可能性を示唆しており、薬物を使用しない世界初の革新的な治療法となることが期待されます。

本研究成果は2020年7月19日付(英国時間)に、欧州心臓病学会の学会誌であるCardiovascular Research誌にオンライン掲載されました。

【用語解説】

注1. 左室駆出率:心臓が1回の収縮で拍出する血液量を、心臓が最も拡張したときの容積を100%として表した値。左心室の収縮力(ポンプ能力)の指標。ヒトにおける正常値は 50~80%。

注2. 低出力パルス波超音波:人間の可聴域を超える周波数(20kHz以上)を持った波は超音波と呼ばれ、媒質を振動して伝導する縦波(疎密波)から構成される。パルス波は、連続的に音波を発信し続ける連続波とは対照的に、断続的に音波を発信する照射方法であり、生体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑えられるため、連続波よりも高い強度での照射が可能になる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・循環器EBM開発学寄附講座
客員教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
(現職:国際医療福祉大学 副大学院長)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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