2020年 | プレスリリース・研究成果
独創的な反応設計に基づくアルカロイドの世界最短合成を達成 〜創薬研究を目指した化学合成法の開発〜
【発表のポイント】
- 医薬品のシーズとなりうる植物アルカロイド、デオキソアポディンの世界最短ルートでの化学合成に成功した。
- 多くの医薬品に含まれるインドール環の化学的に不活性な炭素-水素結合の一つを選択的に活性化し、インドールを含む環状構造の新たな合成法を確立した。
- 従来の毒性の高い水銀試薬を用いたアミンの酸化の代替法として、低毒性で環境負荷が少なくかつ安価な鉄試薬を用いる手法を見出した。
【概要】
植物から得られるアスピドスペルマアルカロイドの一種であるデオキソアポディンは、新規抗がん剤や白血病治療薬の候補化合物の部分骨格を構成し、創薬研究への応用が期待されています。しかし、その複雑な構造から化学合成による十分量の供給が困難でした。東北大学大学院薬学研究科の徳山英利教授と植田浩史講師らの研究グループは、デオキソアポディンの世界最短ルートでの化学合成に成功しました。
本研究では、従来の合成ルートのおおよそ半分の長さのルートで、グラム以上の量的供給を可能にする画期的な合成を実現しました。さらに、毒性の高い水銀試薬を必要とした既存のアミンの酸化を、低毒性で環境負荷が少なくかつ安価な鉄試薬を用いた手法へと代替することにも成功しています。これまで困難であった本化合物の量的供給を可能にする実用的化学合成の実現は、今後の創薬研究の発展に寄与すると期待されます。
本研究成果は、ドイツ化学会誌Angewandte Chemie International Editionに令和2年9月8日に掲載されました。

図1. アスピドスペルマアルカロイド群
問い合わせ先
東北大学大学院薬学研究科
徳山 英利教授
電話:022-795-6887
E-mail: hidetoshi.tokuyama.d4*tohoku.ac.jp
植田 浩史講師
電話:022-795-6878
E-mail: hirofumi.ueda.d8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)