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お椀型分子の表と裏を利用した強誘電体メモリの作製~ナノレベル高密度メモリのための新分子デザイン~

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:多元物質科学研究所・教授・芥川 智行
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 入手が容易で毒性の少ない元素から構成される有機強誘電体は、次世代の高密度メモリへの応用の観点から注目を集めている。メモリの担い手となる「お椀型分子」を開発し、それが強誘電体として振舞うことを実証した。
  • 本分子で見られたボウル反転現象は、不揮発性強誘電体メモリ(注1)への応用が期待され、従来のメモリ密度の数十倍を可能とする分子メモリ素子の開発に繋がる研究成果である。

【概要】

従来の記録密度の限界を突破する高密度メモリの実現には、分子レベルでデザインされた新物質の開発が鍵となります。東北大学の大学院生 呉筧筠氏、芥川智行教授、埼玉大学の古川俊輔助教、斎藤雅一教授らの研究グループは、非平面型の湾曲したお椀型共役分子(注2)であるトリチアスマネン誘導体(注3)を用いて、固体状態におけるお椀型分子のボウル反転現象による双極子モーメントのスイッチングを利用した有機強誘電体の作製に成功しました。お椀型分子は、分子の内側と外側(表と裏)の区別が可能で、外部電場を印加すると分子の表裏が反転します。このように分子に表裏を起源とする非対称性を付与することができ、分子の双極子モーメントの反転を利用した新たな動作原理に基づく分子メモリの創製に利用できることを実証しました。

本研究の成果は英国現地時間の2月3日、学術誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。

本研究は、科研費基盤研究(A)JP19H00886、科研費学術変革研究「高密度共役」JP20H05865およびJST CREST 研究JPMJCR18I4による成果です。

【用語解説】

注1.不揮発性強誘電体メモリ
電場-分極曲線にヒステリシスを示す強誘電体は、外部電場を切っても二種類の残留分極値(+Prと−Pr)を示す双安定状態を形成する。電源を切った時の記憶状態を"0"または"1"とし、それぞれを+ Prと− Prに対応させることで不揮発性メモリとして利用できる。

注2.お椀型共役分子
炭素原子60個が結合したサッカーボール型分子として知られれるフラーレン(C60)は、炭素の6員環と5員環構造が互いに連結した球状π共役化合物である。6員環のみから構成される炭素化合物が平面型構造を形成するのに対し、5員環と6員環を含むスマネンやコラニュレンは、非平面型の湾曲したお椀型電子系分子となることが知られている。

注3.トリチアスマネン誘導体
非平面型π共役化合物であるスマネンの3つのCH2基を硫黄原子に置換した誘導体。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 芥川 智行(あくたがわ ともゆき
電話:022-217-5653
E-mail:akutagawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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