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超音波治療による血管-神経新生作用を発見 -脳梗塞後の神経機能回復のための新しい治療法へ期待-

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院医学系研究科循環器内科学分野・客員教授・下川 宏明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 脳梗塞後に一部の領域で神経新生が生じることが報告されているが、神経新生の誘導を可能にする有効な治療法は未だ存在していない。
  • 低出力パルス波超音波(LIPUS)注1治療が虚血領域に血管新生を惹起し、慢性炎症を抑制することを明らかにしてきたが、今回、脳梗塞マウスモデルにおいて、LIPUS治療が血管-神経新生を惹起して、梗塞サイズを縮小し神経学的後遺症を軽減することを明らかにした。
  • 本研究結果により、脳梗塞などの神経疾患に対してLIPUS治療が有効である可能性が示された。

【概要】

脳に梗塞が起きると一部の脳領域で神経が新生し、損なわれた機能を補完しようとすることが報告されていますが、この神経新生を効果的に誘導する治療法は未だ確立されていません。東北大学大学院 医学系研究科 循環器内科学分野の下川 宏明(しもかわ ひろあき)客員教授、安田 聡(やすだ さとし)教授、進藤 智彦(しんどう ともひこ)助教、一條 貞満(いちじょう さだみつ)医師らの研究グループは、マウス脳梗塞モデルにおいて、低出力パルス波超音波(LIPUS)が血管-神経新生を促進し、脳梗塞に対して治療的効果を発揮することを明らかにしました。下川教授らは、現在、認知症患者に対するLIPUS治療の効果を検証する医師主導治験を実施しています。本研究によりLIPUSのさらなる作用機序が解明され、今後、脳梗塞などの神経疾患に対してもLIPUS治療が応用できる可能性が期待されます。

本研究成果は、2021年3月2日午前10時(現地時間、日本時間3月2日午後7時)Scientific Reports誌(電子版)にオンライン掲載されました。

図1.脳梗塞に対するLIPUSの作用機序
LIPUS治療は、血管内皮細胞に作用しeNOSの活性化およびVEGFの産生を亢進させ、梗塞領域周囲の血管新生を促進する。それに続き、SDF-1およびCXCR4が誘導され、新生神経細胞が梗塞部位へ遊走し、神経機能回復を促進することが明らかになった。

【用語解説】

注1. 低出力パルス波超音波(LIPUS: low-intensity pulsed ultrasound):人間の可聴域を超える周波数(20kHz以上)を持った波は超音波と呼ばれ、媒質を振動して伝導する縦波(疎密波)から構成される。パルス波は、連続的に音波を発信し続ける連続波とは対照的に、断続的に音波を発信する照射方法であり、生体内の機械的振動によって生じる熱の発生を抑えられるため、連続波よりも高い強度での照射が可能になる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野
客員教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
(現職:国際医療福祉大学 副大学院長)
電話番号:022-717-7152
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-7891
FAX番号:022-717-8187
Eメール:pr-office*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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