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一つの細胞が異なるエクソソームを分泌する分子機構の発見〜新たながん治療薬開発への応用に期待〜

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:生命科学研究科・助教・松井 貴英
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 私達の体を構成する細胞は、細胞外に向け小胞(エクソソーム)を分泌し、周囲の細胞の増殖や分化を制御
  • 単一の細胞が性質の異なるエクソソームを分泌することを発見し、異なるエクソソームの形成を制御する分子機構を解明
  • エクソソームはがん細胞の増殖や浸潤にも関与することから、本発見のがん治療薬への応用も期待

【概要】

体を構成するほぼ全ての細胞は、エクソソーム*1(細胞外の小胞)を分泌し、周囲の細胞や組織、器官の恒常性を調節しています。また、エクソソームはがんなどの病態とも密接に関連することから、その生理機能に関する研究が急速に進展しています。その一方で、性質の異なるエクソソームが同一の細胞内で生まれる詳細な分子機構は明らかではありませんでした。

東北大学大学院生命科学研究科の松井貴英助教、福田光則教授らの研究グループは、単一の細胞から性質の異なるエクソソームが相反する方向へ分泌されることを発見し、それらを生み出す二つの分子機構を解明しました。本研究は、一つの細胞が二つの異なるエクソソームを形成する分子機構の使い分けを解明した初めての報告です。本研究で解明した形成機構が、がん細胞でも機能することを検証できれば、がん転移に関わるエクソソーム形成を特異的に阻害するなど新しい疾患治療薬の開発へと応用されることが期待されます。

本研究成果は、2021年3月16日付けで、英国の国際科学誌『EMBO Reports』の電子版に掲載されました。

図1. エクソソームの分泌様式
内部にエクソソームの元となる小胞を含む多胞体が細胞膜と融合すると、多胞体内の小胞が細胞外へエクソソームとして分泌されます。エクソソームには様々な生理活性物質が含まれており、周囲の細胞に働きかけることで、恒常性の維持が保たれています。また、エクソソームは様々な疾患とも密接な関連があり、がん化の誘導にも関与しています。

【用語解説】

*1 エクソソーム
細胞内に由来する直径50〜200 nm程度(1 nm = 1 mmの100万分の1)の細胞外の小胞。細胞内の多胞体が細胞膜と融合することで、多胞体内の小胞が細胞外へと分泌されます(図1参照)。この分泌された細胞外の小胞のことをエクソソームと呼びます。一般的なホルモンなどの分泌では、ホルモンを含む分泌小胞が細胞膜と融合することで、内容物のみが細胞外へと分泌されますが、エクソソームは膜に覆われた状態で、「小胞ごと分泌」される点が大きく異なります。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 松井 貴英 (まつい たかひで)
電話番号:022-795-3641
Eメール:takahide.matsui.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院生命科学研究科
担当 福田 光則 (ふくだ みつのり)
電話番号:022-795-7731
Eメール:nori*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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