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脳の発達に甲状腺ホルモンが関わる分子メカニズム -周産期の甲状腺ホルモン低下が精神疾患関連分子の発現に影響-

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:情報科学研究科 システム情報科学専攻 情報生物学分野・助教・内田 克哉
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 甲状腺ホルモンが抑制性神経細胞のパルブアルブミン注1の発現を制御
  • 甲状腺ホルモンの低下がレット症候群責任分子のMeCP2注2発現を低下
  • 甲状腺ホルモンの低下が神経細胞の形作りに関与するCUX1注3発現を低下

【概要】

周産期の甲状腺ホルモン低下は、適切な治療が施されないと重篤な知能障害を引き起こすことが昔から知られていました。現在では治療法が確立され、薬によるコントロールが可能になっていますが、甲状腺ホルモン不足によって生じる知能障害のメカニズムについては十分に解明されていません。

東北大学大学院情報科学研究科の内田克哉助教を中心とする研究グループは、数年前からこの問題の掘り起こしを行い、甲状腺ホルモン不足が脳の発達にどのような変化をもたらすかを調べるために、マウスを用いて先天性甲状腺機能低下症を実験的に再現しました。その結果、周産期の甲状腺ホルモン低下により、自閉症や統合失調症の発症に関与するとされるいくつかの分子が変化することを見出しました。今後の本研究の発展により、精神疾患発現に関与する共通の分子基盤の解明が期待されます。

研究成果は、2021年3月24日、英国学術誌Scientific Reportsに掲載されました。

図1 甲状腺機能低下症個体にみられるMeCP2ならびにCUX1発現の低下

【用語解説】

注1 パルブアルブミン(PV):カルシウムを結合する低分子のアルブミンをPVと称する。脳内では一部の抑制性神経細胞内に存在し、興奮性神経細胞の活動を調節している。このためPVを含有する神経細胞の機能が変化すると神経活動の律動的な動機に異常が生じることが知られている。また統合失調症や自閉症患者の死後脳標本を観察するとPV神経細胞の減少が認められる。

注2 MeCP2:MeCP2はmethyl-CpG binding protein 2の略称で、遺伝子の発現をコントロールする因子の一つである。このMeCP2遺伝子の異常は、神経発達障害を示すレット症候群を誘発する。

注3 CUX1:CUX1はCut Like Homeobox 1の略称で遺伝子発現を調節する転写因子の一つである。脳では神経細胞の分化に関与し、かつ神経細胞の突起(樹状突起)の成長や神経伝達に関与する樹状突起上の棘突起(スパイン)形成にも寄与する重要な因子として知られている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野
助教 内田 克哉 (うちだ かつや) 
022-795-47654
E-mail: uchida*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学 大学院情報科学研究科 広報室
佐藤 みどり (さとう みどり)
022-795-4529
E-mail: koho*is.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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