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眺める方向によって明るさが変わる磁石の開発に成功 有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系材料の新しい光機能を開拓

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:金属材料研究所・准教授・谷口 耕治
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 眺める方向によって明るさが変化する磁石材料の開発に成功しました。
  • 身の回りの磁石が出す程度の弱い磁場で明るさの制御が可能になります。
  • 優れたフォトニクス*1材料として注目されている有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系化合物*2の新しい光機能の開拓を行いました。

【概要】

有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系化合物は、比較的低温かつ簡便なプロセスでの合成が可能でありながら、優れた太陽電池材料としての光学特性を示すことなどから、新しいフォトニクス材料として世界的に注目を集めています。これまでこの材料の光機能の開拓は、磁性を持たない化合物のみに限定されていましたが、磁性を持つ化合物に目を向けることで、光と磁性を結びつけるような新しい光機能の創出も期待されます。

東北大学金属材料研究所の谷口耕治准教授、宮坂等教授らは、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻の有馬孝尚教授、阿部伸行助教(現日本大学文理学部准教授)らとの共同研究により、二次元有機・無機ハイブリッドペロブスカイト*3において、キラル*4分子を用いて反転心*5を持たない磁石の材料設計に成功し、身の回りにある磁石が出すような弱い磁場で、眺める方向により明るさが変化する機能を発現させることに成功しました。

今後、本研究で示された材料設計指針によって物質開発が進むことで、さまざまなスピンフォトニクスデバイスへの応用展開などが期待されます。

本研究成果は、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」(5月24日付:日本時間5月25日)に掲載されました。

【用語解説】

※1 フォトニクス: 光を扱う科学と応用に関する研究分野のこと。

※2 有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系化合物: 有機物と無機物から成るペロブスカイト型構造の化合物とその類縁体の層状化合物のこと。結晶構造は、二価金属を中心としてハロゲン原子(周期表の17 族元素の総称。フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンが相当。)が構成する八面体骨格が頂点共有して二次元的に広がった無機層で特徴付けられ、無機層の層数が異なる様々な類縁体が知られている。太陽電池材料として知られる有機・無機ハイブリッドペロブスカイトは、無機層が無限に連なった極限の構造に相当する。この場合、有機分子は無機骨格の空孔に収容された構造となる。

※3 二次元有機・無機ハイブリッドペロブスカイト: 有機・無機ハイブリッドペロブスカイトの類縁体の層状化合物のこと。無機層と有機アンモニウム分子カチオンからなる有機層が交互に積層した結晶構造となっている。

※4 キラル: 図形や物体が、その鏡像と重ね合わすことが出来ない性質(キラリティ)をもつこと。右手と左手の関係があること。

※5 反転心: 空間座標(x, y, z)を(−x, −y, −z)に変換する際の原点のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所 錯体物性化学研究部門
谷口 耕治
TEL:022-215-2032
Email:taniguchi*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:imr-press*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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