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不明な点が多かった微小血管狭心症の実態を明らかに -世界初の7ヶ国参加大規模国際共同研究からの知見-

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院医学系研究科循環器内科学分野・客員教授・下川 宏明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 胸痛や心電図異常から狭心症が疑われたため心臓カテーテル検査を受けた患者の約4割は、冠動脈に明らかな狭窄や閉塞病変を有さないことが報告されている。
  • このような非閉塞性冠動脈疾患患者では、冠攣縮性狭心症注1などの冠動脈機能異常が病態に深く関与していることが以前から報告されていたが、近年、新たな病態として微小血管狭心症注2が注目されている。
  • 統一された国際診断基準により正確に診断された微小血管狭心症患者において、初めて前向きの国際共同登録研究を行い、臨床的特徴や危険因子、長期予後などを明らかにした。

【概要】

狭心症の原因として、従来から考えられてきた動脈硬化性の冠動脈狭窄や冠動脈攣縮に加え、近年、冠微小血管の機能異常による微小血管狭心症が新たな病態として注目されています。東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明客員教授らの研究グループは、国際診断基準により微小血管狭心症と正確に診断された患者を世界7ヵ国14施設(図1)から合計686名登録し、その臨床像や長期予後について調査しました。その結果、これまで主に女性の病気と考えられていた微小血管狭心症が男性にも認められること(男女比=約1:2)、年間の心血管イベントの発生率が約7.7%と決して良性の疾患ではないこと(予後に性差なし)、女性患者は、男性患者に比し、症状による生活の質(quality of life, QOL)の低下が顕著であること、欧米人患者はアジア人患者に比し心血管イベントの発生率が高率であるが危険因子等で補正すると人種差が消失することなどが明らかになりました。本研究は、診断方法や予後予測因子が未だ確立されていない微小血管狭心症の臨床像、長期予後を国際共同研究で初めて明らかにした重要な報告であり、予後不良群の層別化や新たな治療法の開発などへつながることが期待されます。

本研究成果は、2021年5月27日午前5時(現地時間、日本時間5月27日午後1時)European Heart Journal誌(電子版)にオンライン掲載されました。

図1 本研究の参加施設
日本、イギリス、ドイツ、アメリカ、イタリア、スペイン、オーストラリアの計7ヵ国、計14施設が本研究に参加した。

【用語解説】

注1. 冠攣縮性狭心症 (vasospastic angina; VSA):心表面の太い冠動脈の攣縮により狭心症状を生じる疾患。多くが安静時、特に夜間から早朝の発作を特徴とする。しばしば心電図上の虚血性変化を伴い、特にST上昇(心電図のS波とT波の間の電位が見かけ上高くなること)を認めるものは異型狭心症と呼ばれる。冠攣縮誘発試験および自然発作によって診断がなされる。治療の第一選択薬はカルシウム拮抗薬であり、その種類や作用時間に関わらず、総じて発作抑制に有効とされる。長時間作用型硝酸薬など、その他の冠拡張薬も推奨されており、治療抵抗例に対する併用効果が期待される。

注2. 微小血管狭心症 (Microvascular angina, MVA):心表面冠動脈の末梢に位置する直径100μm以下の動脈 (細動脈、前細動脈)の拡張不全や攣縮により狭心症状を生じる疾患。閉経後の女性に多いとされ、病態として女性ホルモンの関与が考えられている。心臓カテーテル検査における冠動脈造影と微小血管機能検査や核医学検査などの画像診断など複数の検査によって診断される。治療としては硝酸薬が無効であることが多く、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬の内服が有効とされている。

詳細(プレスリリース本文)※2021年6月7日に訂正版へ差替えPDF
※【研究概要】を以下のとおり訂正いたしました。
修正前:(男女比=約2:1)
修正後:(男女比=約1:2)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科循環器内科
客員教授 下川 宏明(しもかわ ひろあき)
電話番号:022-717-7153
Eメール:shimo*cardio.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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