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酸化ストレスに対抗するタンパク質が微小重力下での筋線維タイプの変化を抑制する

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科医化学分野 教授 山本雅之
研究室ウェブサイト

【概要】

宇宙開発技術の著しい進歩により、人類が宇宙に進出する未来が目の前にまで来ています。一方で、月旅行や宇宙滞在の実現には、微小重力環境が人体に及ぼす影響を明らかにし、これを克服することが不可欠です。これまでの研究で、微小重力環境下では、骨格筋の萎縮および骨格筋線維タイプが変化することが明らかになっています。一般に、骨格筋萎縮や筋線維タイプは、活性酸素の産生増加(酸化ストレス)と関連していること、また、酸化ストレスから生体を保護する働きを持つタンパク質として、転写因子Nrf2 が知られています。

そこで本研究では、Nrf2が宇宙環境における酸化ストレスの防御にも有効ではないかと考え、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」実験棟の微小重力環境において、野生型およびNrf2遺伝子ノックアウトマウスを31日間飼育し、骨格筋に与える影響を調べました。重力変化に対して感受性の高いヒラメ筋に着目し、遺伝子発現解析および組織学的解析した結果、微小重力環境によるヒラメ筋の萎縮には違いは見られませんでしたが、筋線維タイプの変化については、Nrf2遺伝子ノックアウトマウスで大きくなっていました。このことから、Nrf2が、微小重力環境下で生じる筋線維タイプの変化を抑制することが分かりました。

筋線維タイプの変化は、宇宙滞在や老化に伴って生じるものであり、本研究成果をもとに、その分子メカニズムを解明できれば、こういった症状の予防や治療方法の確立につながると期待されます。

図 本研究に用いた実験手法と結果
(A)実験の概要。野生型マウスとNrf2遺伝子ノックアウトマウスを国際宇宙ステーションにおいて微小重力で31日間飼育した。(B)微小重力は骨格筋線維の萎縮と筋線維タイプの変化を誘導する。Nrf2は筋線維タイプの変化を抑制するように機能する。(C)ヒラメ筋横断図の組織学的解析。宇宙実験群では筋線維断面積が減少する。(D)免疫組織学的解析によるヒラメ筋の筋線維タイプの分布。青:タイプI、赤:タイプIIa、黒:タイプIIx、緑:タイプIIb。宇宙実験群ではタイプIIbの筋線維が増加し、筋線維タイプの構成が変化している。

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問い合わせ先

東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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