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明滅オーロラとともに起こるオゾン破壊 ~宇宙からの高エネルギー電子が大気に及ぼす影響を実証~

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科地球物理学専攻 准教授 熊本篤志
研究室ウェブサイト

【概要】

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の三好 由純 教授らの国際研究グループは、宇宙のさえずりと呼ばれる特殊な電波によって、脈動オーロラと呼ばれる明るさが明滅するオーロラが発生した時に、オーロラを起こす電子よりも1000倍以上のエネルギーを持つバン・アレン帯(放射線帯)の高エネルギー電子が高さ60km付近の中間圏にまで侵入することによって、中間圏のオゾンが10%以上減少することを発見しました。

この過程は、本研究グループによって理論的に予測されていたもので、今回、宇宙航空研究開発機構(JAXA)「あらせ」衛星と北欧に設置されている欧州非干渉散乱 (EISCAT) レーダー、及びオーロラ観測ネットワークによる国際共同観測と、本研究グループが開発したシミュレーションを組み合わせた研究によって実証されました。

この成果は、オーロラに伴う宇宙からの電子降り込みが、超高層大気注1だけでなく中層大気注2にも大きな影響を及ぼしていることを実証するものです。中間圏注3オゾンの変化は、気候変化にも影響を及ぼすことが指摘されている重要な過程であり、本研究の成果は、宇宙と地球大気との関係の新たな理解につながるという意義を持っています。

2023年度からは、国立極地研究所や名古屋大学などが参加するEISCAT科学協会によって、次世代の大型大気レーダーEISCAT_3Dの北欧での運用が開始され、宇宙と地球大気との結合過程の理解がさらに進むことが期待されます。

本研究成果は、2021年7月13日19時(日本時間)付英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

図1:本研究の概要:宇宙空間で「あらせ」衛星が「コーラス」電波とバン・アレン帯電子の観測を行い、地上では EISCATと光学観測によって、「脈動オーロラ」と中間圏の観測を行った。

【用語解説】

注1)超高層大気
熱圏、また電離大気である電離圏領域を指す。オーロラが発光しているのも超高層大気である。

注2)中層大気
成層圏と中間圏、および熱圏底部を含む領域であり、高度15km付近から100km付近までをさす。中層大気は、湿潤過程(雲など)や電磁現象(オーロラなど)を含むことなく扱える領域となる。

注3)中間圏
高度45kmから85km付近に存在する大気の層であり、成層圏(高度15-45km)と熱圏(85km以上)の間に位置する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究について)
東北大学大学院 理学研究科 地球物理学専攻
准教授 熊本 篤志(くまもと あつし)
TEL:022-795-6515
E-mail:kumamoto*stpp.gp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院 理学研究科 惑星プラズマ・大気研究センター
准教授 土屋 史紀(つちや ふみのり)
TEL:022-795-6738
E-mail:tsuchiya*pparc.gp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道について)
東北大学大学院 理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
FAX:022-795-5831
E-mail:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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