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膵島移植後の副作用が少ない免疫抑制剤 -糖尿病治療のための膵島移植に最適な新規免疫抑制剤を同定-

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科移植再生医学分野 教授 後藤 昌史
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 低侵襲な糖尿病治療として膵島注1移植が行われているが、免疫拒絶反応注2を抑えるために服用する免疫抑制剤により、耐糖能障害注3や移植膵島への新生血管阻害注4といった副作用が発生することが問題となっている
  • この問題を解決するため、従来の免疫抑制剤注5とは異なる作用機序を持つ新規免疫抑制剤に着目し、その有効性や安全性を実証した
  • 新規免疫抑制剤は耐糖能障害を引き起こさないので、膵島移植のみならず膵臓移植にも有用であり、また移植細胞への新生血管も阻害しないので、肝細胞移植注6などの様々な細胞移植への応用が期待される

【概要】

糖尿病の先端治療として、血糖調節ホルモンであるインスリンを分泌する膵島を患者に移植する治療法があります。しかし、現在の標準的免疫抑制剤については、その副作用が解決すべき喫緊の課題となっています。

東北大学大学院医学系研究科移植再生医学分野の後藤 昌史(ごとう まさふみ)教授、Ibrahim Fathi(イブラヒム ファティ)医師らのグループは、糖尿病治療のための膵島移植に最適な副作用が少ない免疫抑制剤を見出すことに成功しました。この免疫抑制剤(KRP-203)は、従来の免疫抑制剤とは全く異なる作用機序を有しており、問題となっていた耐糖能障害や移植膵島への新生血管阻害といった副作用を引き起こさないため、より安全な膵島移植が可能となります(図1)。本研究成果は、今後、膵島移植による糖尿病治療に大いに役立つと考えられます。さらに今後、肝不全に対する肝細胞移植など、他の様々な細胞移植治療への応用も期待されます。

この研究成果は、2021年7月8日(木)付けで米国の国際学術誌Transplantationに掲載されました。

図1. 概要図

【用語解説】

注1. 膵島:膵臓の中にあるホルモンを分泌する細胞の集団。血糖値を下げる働きを持つインスリンを産生する細胞が含まれる。健常人の場合、一つの膵臓内に約100万個の膵島が存在する。

注2. 免疫拒絶反応:移植された臓器や組織が異物として認識され、ホスト(移植を受けた人のこと)の抗体やリンパ球により攻撃を受け排除される生体反応のこと。

注3. 耐糖能障害:血液中のブドウ糖の代謝に異常が生じた状態。正常と糖尿病の間に位置するが、糖尿病に移行する可能性が高い状態のことを指す。

注4. 新生血管阻害:移植された細胞や腫瘍などは、酸素や栄養分の供給を受けるために、ホスト(移植を受けた人のこと)の細小血管網により表面を被覆されるが、それが何らかの影響により阻まれる状態を指す。

注5. 免疫抑制剤:体内で過剰に引き起こされている異常な免疫反応を制御する薬剤のこと。

注6. 肝細胞移植:肝臓から細胞分離酵素によって肝細胞のみを抽出し、それを代謝性肝疾患や劇症肝炎などの患者へ移植する細胞移植治療法のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科移植再生医学分野
教授 後藤 昌史(ごとう まさふみ)
電話番号:022-717-7895
Eメール:masafumi.goto.c6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8187
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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