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強磁性準結晶の発見~準周期性が示す特異な磁性の解明に向けて飛躍的な前進~

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 教授 佐藤卓
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • Au-Ga-Gd系合金とAu-Ga-Tb系合金の2種類の正二十面体準結晶が、長距離磁気秩序(強磁性秩序)を有することを発見しました。
  • 電子と原子の比(e/a比)を考慮して正二十面体準結晶を合成することにより、様々な準周期磁性を有する材料を得られる可能性が示唆されました。
  • 本研究の成果は、準結晶の有する準周期性の性質の理解に寄与するとともに、新しい磁性材料の開発に貢献することが期待されます。

【概要】

東京理科大学先進工学部マテリアル創成工学科の田村隆治教授、石川明日香技術員、鈴木慎太郎助教、Australian Nuclear Science and Technology Organisation (ANSTO)のMaxim Avdeev博士、東北大学多元物質科学研究所の佐藤卓教授らの研究グループは、Au-Ga-Gd系、Au-Ga-Tb系合金が正二十面体準結晶であることを見出し、さらにこれらの合金が長距離磁気秩序を有することを明らかにしました。また、準結晶中の電子と原子の比率(e/a比)を調整することで、様々な準周期磁気秩序を有する理想的な材料を合成できることも示唆しました。これらの研究成果は、準周期性特有の物性の理解や従来とは異なる磁性材料の開発に有用な知見です。

準結晶は1984年にイスラエル工科大学のダニエル・シェヒトマン博士によって初めて発見され、その発見に対して2011年にノーベル化学賞が贈られました。準結晶内では原子、分子、イオンが集合し、規則的に配列した構造を形成していますが、その配列には周期性がないことが特徴です。そのため、結晶や非晶質(アモルファス)とは異なる結晶構造を有しており、それらがどのような電子状態を実現するかはよくわかっていませんでした。特に、長距離磁気秩序が実現可能か否かは未解明であり、準結晶分野における長年の課題でした。

本研究グループは、過去の膨大な研究結果から、正二十面体準結晶のe/a比が1.70に近い場合、強磁性体が得られる可能性が高いことを突き止めていました。その条件の下で材料探索を行い、Au-Ga-Gd系合金(Au65Ga20Gd15)とAu-Ga-Tb系合金(Au65Ga20Gd15)に注目しました。様々な検討の結果、これらの合金が正二十面体準結晶を形成すると同時に、長距離磁気秩序(強磁性)を有する材料であることを発見しました。準結晶における準周期的な磁気秩序の実現に向けた研究は世界で広く行われてきましたが、1984年の準結晶の発見から現在まで達成されていませんでした。今回の発見はAu系合金の準結晶における画期的な成果であり、準周期性に由来した特殊な性質を理解する上で大変重要な知見と考えられます。今後のさらなる研究の発展によって、新たな磁性材料の開発への応用が期待されます。

本研究成果は、2021年11月17日に国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
教授 佐藤 卓 (さとう たく)
E-mail:taku*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
広報情報室
電話: 022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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