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オングストローム世代半導体製造技術での磁気抵抗メモリ基盤技術を確立 ~直径5ナノメートル以下の磁気トンネル接合素子で高速動作を実証~

【本学研究者情報】

〇電気通信研究所 教授 深見俊輔
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 磁気抵抗メモリで記憶を担う磁気トンネル接合素子の高速動作を特徴づけ、時定数を制御できる新構造を提案
  • 直径5ナノメートル以下の素子で10ナノ秒以下の高速書き込み動作を実証
  • オングストローム世代半導体製造技術での磁気抵抗メモリ基盤技術を確立

【概要】

DXおよびカーボンニュートラル(脱炭素)社会の実現に必要不可欠な半導体の分野では熾烈な技術競争が行われています。なかでも、スピントロニクス技術を利用した不揮発性メモリであるスピン移行トルク磁気抵抗メモリ(STT-MRAM)並びにそれを混載メモリに適応した省電力ロジックは、半導体集積回路の大幅な低消費電力化をもたらすと期待され、特に注目されています。しかし、将来の微細世代技術に適用して社会実装を促進するためには、記憶素子の微細化と加えて高速動作に関する性能の向上が求められていました。

東北大学材料科学高等研究所の陣内佛霖助教、電気通信研究所の五十嵐純太学術研究員、深見俊輔教授、大野英男教授(現総長)らは、高速書き込み動作を特徴づける時定数を制御できる磁気トンネル接合(MTJ)(STT-MRAMの情報記憶素子)の構造を提案し、5ナノメートル以下の直径を有するMTJ素子で3.5ナノ秒までの高速書き込み動作を実証しました。これは、STT-MRAMが将来のオングストローム世代半導体製造技術[注]でのSRAMや高速DRAMの代替として使えることを示す重要な成果です。本研究により、超大容量・低消費電力・高性能不揮発性メモリ、およびそれを用いた超高性能・低消費電力半導体集積回路の開発が加速することが期待されます。

本研究成果は、2021年12月11-15日(米国時間)に米国サンフランシスコで開催される、半導体素子に関する世界で最も影響力のある学術会議、「米国電子情報学会(IEEE)主催の国際電子デバイス会議(International Electron Devices Meeting)」で発表されます。 

図1) MTJ素子は用途によってデータ書き込み・保持特性の仕様が決まる。同時に、シリコン半導体素子と集積化されるため、MTJ素子の微細化も必須となっている。直径十数ナノメートルまでのMTJ素子技術はすでに量産開発が進められている。直径一桁ナノメートル(5ナノメートル以下)のMTJ素子技術では、東北大グループから車載応用に適用可能な高データ保持性能を有する素子の動作が実証されている[1,2]。本研究は、SRAM置き換えを視野にいれた高速動作可能な直径5ナノメートル以下のMTJ素子を開発した。[1] K. Watanabe et al., Nature Communications 9, 663 (2018). [2] B. Jinnai et al., IEEE IEDM, 24.6.1(2020).

【用語解説】

[注] オングストローム世代半導体製造技術
半導体集積回路はその構成要素となる電界効果トランジスタのサイズや配線のピッチを縮小することで性能が向上する。トランジスタのサイズや配線のピッチの特徴的な長さスケールで半導体製造技術の世代(例:45ナノメートル世代、32ナノメートル世代、22ナノメートル世代、...)が定義され、18ヶ月毎に集積度が2倍になるというムーアの法則に従って微細化が進められてきた。ただし現在ではトランジスタや配線ピッチの物理的な長さと技術世代は必ずしも対応はしていない。現在5ナノメートル世代の半導体製造技術による製品が販売され、3ナノメートル世代の研究開発が進んでいる。
オングストロームとは、0.1ナノメートル(100億分の1メートル)を表す長さの単位。オングストローム世代の半導体製造技術は、3ナノメートルなどの一桁ナノメートル世代以降の半導体製造技術になる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

研究に関すること
東北大学電気通信研究所
教授 深見 俊輔
電話 022-217-5555
E-mail s-fukami*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

OPERAプロジェクトに関すること
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター
センター長・教授 遠藤 哲郎
電話 022-796-3410

報道に関すること
東北大学材料科学高等研究所 広報戦略室
電話 022-217-6146
E-mail aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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