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地熱エネルギーの社会受容性 ― 社会アンケートと数値モデルを用いた合意形成の可視化 ―

【本学研究者情報】

環境科学研究科 教授 土屋範芳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 福島県土湯温泉の温泉バイナリー発電事業に関わるさまざまなステークホルダーに対して社会アンケート調査を実施。
  • アンケート結果を基に、ABM(Agent-Based Model)を用いて温泉バイナリー発電事業の合意形成のプロセスを可視化。
  • 地域構造のネットワークとそれを構成するエージェント(人)間の関係をデータ駆動型のパラメータで関係づけ、新しい社会受容性形成モデルを提案。
  • このモデル化手法を用いて、地熱エネルギーの社会受容性の熟成プロセスの思考実験が可能となり、地域にとって適切な開発目標の設定が可能。

【概要】

世界第3 位の地熱資源量を誇る日本ですが、その地熱発電量は国内の発電量の0.2%未満です。そのもっとも大きな理由とされるのは周辺の温泉地域からの反対により開発が進まないことです。福島県土湯温泉は、福島第一原発事故で大きな風評被害を受け、旅館の廃業など大きな影響を受けながら、地域の温泉資源を活用した温泉バイナリー発電で町おこしを行い、復興の歩みを進めています。

東北大学大学院環境科学研究科の土屋範芳教授らの研究グループは、福島県土湯温泉地域に対して、地熱エネルギー利用に関する社会アンケートを実施し、その結果を基に、地熱エネルギーの利用に関わる社会受容性の熟成を、ABM(Agent-Based Modeling)という、新しい数値シミュレーション方法で解明し、SLO(Social License to Operate:社会や地域コミュニティにその事業活動が受け入れられること)の形成プロセスを数値的に明らかにしました。本研究は、新しい数値シミュレーション技法を用いて、地域社会のネットワーク構造と合意形成のプロセスの可視化に成功した研究です。

社会科学と自然科学を融合させ、地熱エネルギーの利用を多面的に考察する研究で、地熱エネルギーのみならず、地域とさまざまな再生可能エネルギー開発の社会受容性の解析など、広い範囲への応用展開が期待されます。

本成果は、2月28日午前10時 (イギリス時間)に科学誌Scientific Reportsでonline 公表されました。

図1 土湯温泉のAgentのネットワーク構造。社会アンケート結果から、各Agent間の関わりをネットワークモデルとしてとらえ、Agentの属性、影響力、また各Agent間の関係性を数値化した。このネットワーク構造を基礎として、意見の伝搬と合意形成のプロセスを可視化した。Agent間に導入したパラメータは、意見の傾向(T)、相互関係(IP)、及び影響力(I)の3つ。各Agent間の賛成・反対しやすさを表す「意見の傾向」(T)は意見データと属性データの関係性をベイズ推論という統計的因果推論手法を用いて確率分布として求めた。また、相互作用の確率(IP)はネットワーク上の距離から、影響力(I)はネットワーク上における重要性を表す中心性と呼ばれる指標を用いている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院環境科学研究科
教授 土屋 範芳
電話: 022-795-6335
E-mail: noriyoshi.tscuhiay.e6*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
助手 物部 朋子
電話: 022-752-2241
FAX: 022-752-2236
E-mail: tomoko.monobe.d4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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