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泡を利用した細菌塊"バイオフィルム"破壊技術の開発 顎骨破壊抑制に有効な新規「歯の根」治療技術

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 講師 八幡祥生
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 微生物の集合体である「バイオフィルム*1」の破壊を目指した洗浄技術が医療分野などで近年注目されています。歯科医療でも「歯の根」(根管)にバイオフィルム*1が形成されると治りにくい顎骨破壊の原因となります。
  • レーザー照射により発生する泡(キャビテーション*2)によって、根管に固着したバイオフィルム破壊を行う技術開発に成功しました。
  • 長期に渡って歯の痛みが持続する、何度も再治療が繰り返される、抜歯を余儀なくされていた歯を、治癒に導く新たな治療法として応用展開を目指します。

【概要】

歯内部(根管)に細菌が侵入することにより生じる根尖性歯周炎*3は、顎骨破壊を引き起こします。特に通常の治療が効きにくい難治性の症例では根管内にバイオフィルムが形成されており、その除去は困難を極めます。東北大学大学院歯学研究科歯科保存学分野の八幡祥生講師、長橋泰次大学院生、齋藤正寛教授らのグループは、パルスレーザーを用いることで、泡の力(キャビテーション)によって歯内部のバイオフィルムを除去する技術を確立しました。

本研究では、パルスレーザーの一つ、Er:YAGレーザーを使用し、根管内にレーザー照射することでバイオフィルム除去が可能であることを明らかにしました。この現象は照射に伴う圧力変化により生じる泡(キャビテーション)と泡の崩壊時に発生する衝撃波が、バイオフィルムを剥がすことによると考えられます。この技術により、難治性の根尖性歯周炎の新たな治療方法の確立と同時に、技術的難易度を飛躍的に低くすることが可能です。これまでに長期に渡って痛みが持続する、何度も再治療が繰り返される、抜歯を余儀なくされていた歯を、治癒に導き保存する、新規治療方法として実用化を目指します。

この研究成果は、2022年3月22日英国科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

図 難治性の根尖性歯周炎は、歯内部に形成されたバイオフィルムによって引き起こされる(図左)。根管内に泡(キャビテーション)を発生させることで、バイオフィルムを破壊する技術(図右)開発に成功した。

【用語解説】

*1 バイオフィルム
細菌とその代謝産物である菌体外多糖から構成される。バイオフィルムが形成されると、消毒剤等での除去は困難となる。通常の治療では奏効しない難治性の根尖性歯周炎では、根管内にバイオフィルムが形成されることで、持続性の炎症を惹起することが問題となる。

*2 キャビテーション
液体が流速の上昇などにより飽和蒸気圧以下になったときに気体に変化し、気泡が発生する現象。圧上昇に伴い気泡は消失するが、その際に衝撃圧を発生させる。

*3 根尖性歯周炎 
歯の内部に細菌が侵入することで、歯を経路に顎の骨の中に生じる炎症性疾患。標準治療は感染源の除去だが、我が国では高い有病率を背景に、治療が奏効しない症例が多く見られ、新たな対応策が必要とされている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
歯科保存学分野
講師 八幡 祥生
電話: 022-717-8343
E-mail: yahataendo*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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