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健康保険適用の白い被せ物はすべての奥歯に適用できる可能性を報告 ―歯科用金属の価格高騰対策として期待―

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 教授 江草宏
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • CAD/CAM*1で製作した金属を使わない白い被せ物(CAD/CAM冠)を、大臼歯に装着した場合の治療成績を調べた。
  • CAD/CAM冠を装着した362本の大臼歯について、最長4年間の経過を調査した結果、生じたトラブルの多くは、懸念されていた冠の破折ではなく、冠の脱離であり、そのほとんどは再装着によりそのまま使用可能だった。
  • 健康保険が適用されていない第二大臼歯へのCAD/CAM冠の治療成績は、健康保険が適用されている第一大臼歯CAD/CAM冠の成績と同等だったことから、すべての奥歯にCAD/CAM冠が適用できる可能性が示唆された。

【概要】

歯の被せ物(冠)の治療に用いられる金属には、金属アレルギーや見た目が良くないなどの問題があります。そこで近年は、金属を使わずに、CAD/CAMで製作した歯科用プラスティック材料の白い被せ物(CAD/CAM冠)が応用されるようになりました。また、最近の歯科界では、貴金属の価格高騰に伴う医療費の増大と、歯科医療機関の経済的な負担が大きな問題となっています。しかしこの技術を、大きな噛む力が加わる大臼歯、特に第二大臼歯に積極的に用いて良いかどうかを医学的に判断するエビデンスはほとんどありませんでした。

東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野の猪股実祐(いのまた みゆ)博士、原田章生(はらだ あきお)助教および江草 宏(えぐさ ひろし)教授らは、CAD/CAM冠を装着した大臼歯362本の経過を診療録から最長4年間にわたり調査しました。その結果、生じたトラブルの多くは、冠の脱離であり、そのほとんどは再装着することでそのまま使用できることがわかりました。また、第二大臼歯に対する治療成績は、現在健康保険が適用されている第一大臼歯の場合と統計学的に同等でした。本研究結果は、すべての奥歯へのCAD/CAM冠の適応症拡大を示唆するもので、歯科用金属の価格高騰による医療費増加などの問題解決につながることが期待されます。

本研究成果は、2022年4月7日付(米国東部時間)でPLOS ONE誌に掲載されました。

図1: CAD/CAM冠を装着した362本の大臼歯に生じたトラブルの種類と頻度

【用語解説】

*1) CAD/CAM:Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略。コンピュータによる冠などの補綴装置の設計と切削加工を行う。物理的特性の優れた、均一かつ高品質な補綴装置を製作できる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 
分子・再生歯科補綴学分野
助教 原田 章生(はらだ あきお)
E-mail: akio.harada.c8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

教授 江草 宏(えぐさ ひろし)
E-mail: egu*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho@grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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