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魚類ヒレの進化的起源に関する150年来の定説を覆す ―新規仮説:ヒレは削り出しで作られるのではない!―

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 田村宏治
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 魚類は発生初期に一枚の膜ヒレを作り出し、成長が進むとこれが正中ヒレ(背ビレ・尻ビレ・尾ビレ)注1に置き換わります。
  • 正中ヒレは膜ヒレからの「削り出し」で形成されると古くから考えられてきましたが、膜ヒレとは独立した「ヒレを作る細胞の出現と増殖」により正中ヒレが形成されることを明らかにしました。
  • この結果は、ヒレを作る細胞が出現・増殖する発生メカニズムが新たに生じたことで正中ヒレが進化の中で獲得されたことを示唆します。

【概要】

魚類の正中ヒレ(背ビレ・尻ビレ・尾ビレ)は、遊泳などにおいて重要な器官です。正中ヒレの発生・進化の過程については、150年前に提唱された、膜ヒレからの「削り出し」で形成されるという仮説が信じられてきました。東北大学大学院生命科学研究科の宮本知英氏(博士課程前期学生)・阿部玄武助教(現・鳥取大准教授)らのグループは、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所の川上浩一教授と共同研究を行い、熱帯魚ゼブラフィッシュを用いて背ビレの発生過程を分子・細胞レベルで解析しました。この結果から、背ビレは発生初期に作り出される一続きの膜ヒレとは独立した「背ビレを作る細胞の出現と増殖」によって形成されることを明らかにしました。これは、背ビレは祖先の持つ一続きのヒレから「削り出された」のではなく、「膜ヒレとは独立な細胞が出現・増殖する発生メカニズム」の新たな出現によって正中ヒレが獲得されたことを示唆するもので、ヒレの進化的起源の新たな仮説を提案する重要な報告になります。

本研究結果は、5月7日付でScientific Reports誌に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金および笹川科学研究助成の支援を受けて行われました。

【用語解説】

注1 ヒレ : ヒレは、正中線上に1枚ずつある正中ヒレ(背ビレ・尻ビレ・尾ビレなど)と体側に対となって存在する有対ヒレ(胸ビレや腹ビレ)の2種類に分けられる。正中ヒレは有対ヒレよりも先に獲得されたと考えられている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科生態発生適応科学専攻 動物発生分野
教授 田村 宏治 (たむら こうじ)
電話番号: 022-795-6691
Eメール: tam*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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