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エクソソームの細胞内輸送機構を解明 〜パーキンソン病の新たな治療薬開発への応用に期待〜

【本学研究者情報】

〇大学院生命科学研究科 助教 松井 貴英
大学院生命科学研究科 教授 福田 光則
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 細胞から小胞に包まれて分泌されたエクソソーム*1は、周囲の細胞の増殖や分化を制御し、様々な疾患とも関連
  • 細胞内で形成されたエクソソームを、細胞膜へと輸送する新たな制御分子としてRab39A及びRab39Bを同定
  • Rab39Bは若年性パーキンソン病*2の原因遺伝子で、疾患変異型Rab39Bのエクソソーム分泌能が低下していることを発見

【概要】

エクソソームには様々な生理活性物質が含まれており、周囲の細胞や組織、器官の恒常性を調節しているほか、パーキンソン病など様々な疾患とも密接に関連しています。しかしながら、細胞内で形成されたエクソソームがどのようにして細胞膜まで輸送され、分泌に至るのか、その詳細な分子機構はこれまで不明でした。

 東北大学大学院生命科学研究科の松井貴英助教、福田光則教授らの研究グループは、エクソソームの細胞内輸送を制御する分子として、Rab39A及びRab39B(以下、Rab39A/B)を発見しました。Rab39A/Bが正常に機能できない細胞では、エクソソームが核の周辺に蓄積し、その分泌が阻害されます。興味深いことに、Rab39Bは若年性パーキンソン病の原因遺伝子として知られていますが、その発症機序は不明でした。研究グループはパーキンソン病変異型Rab39Bを発現した細胞では、野生型細胞に比べ、エクソソーム分泌が減少することも見出しました。今後、本研究成果が、Rab39Bとエクソソーム分泌に着目したパーキンソン病の新たな治療薬開発へと応用されることが期待されます。

本研究成果は、2022年6月1日付けで、米国の国際科学誌『Cell Reports』の電子版に掲載されました。

図1. エクソソームの分泌様式
内部にエクソソームの元となる小胞を含む多胞体が細胞膜方向へ輸送され、細胞膜と融合すると、多胞体内の小胞が細胞外へエクソソームとして分泌されます。エクソソームには様々な生理活性物質が含まれており、周囲の細胞に働きかけることで、恒常性が維持されます。また、エクソソームは様々な疾患とも密接な関連があります。

【用語解説】

*1 エクソソーム
細胞内に由来する直径50〜200 nm程度(1 nm = 1 mmの100万分の1)の細胞外の小胞。細胞内の多胞体という細胞小器官が細胞膜と融合することで、多胞体内の小胞が細胞外へと分泌されます(図1参照)。この分泌された細胞外の小胞のことをエクソソームと呼びます。一般的なホルモンなどの分泌では、ホルモンを含む分泌小胞が細胞膜と融合することで、内容物のみが細胞外へと分泌されますが、エクソソームは膜に覆われた状態で、「小胞ごと分泌」される点が大きく異なります。

*2 パーキンソン病
中脳のドパミン神経が徐々に死滅することで、手足のふるえや歩行障害などの運動障害を呈するとともに、認知症、うつ、自律神経機能の低下を生じる疾患。一般的には、50歳以上で発症すると考えられていますが、40歳未満でも発症すること(若年性パーキンソン病)が知られています。Rab39Bは、若年性の家族性パーキンソン病に特異的な原因遺伝子の一つです。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 松井 貴英 (まつい たかひで)
電話番号:022-795-3641
Eメール:takahide.matsui.c1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院生命科学研究科
担当 福田 光則 (ふくだ みつのり)
電話番号:022-795-7731
E メール:nori*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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