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コロナウイルスのゲノムに蓄積した進化の痕跡を発見 コロナウイルスがもたらすパンデミックの機序解明へ期待

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座 助教 赤石哲也
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〇病院総合地域医療教育支援部 教授 石井正
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〇大学院医学系研究科分子病理学分野 名誉教授 堀井明
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【発表のポイント】

  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックをもたらしたSARS-CoV-2を含む複数のSARS関連コロナウイルスの全ゲノム配列を比較した。
  • その結果、複数のゲノム領域で、長い配列の挿入・欠失、あるいはその両者が同時に起きていることを確認した。
  • 本研究は、同ウイルスのさらなる有害な変異を阻止する手段を探る手がかりとなる可能性がある。

【概要】

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による世界的なパンデミックは、発生から3年近くたつ2022年現在もまだ終息していません。人獣共通感染症であるコロナウイルスやインフルエンザウイルスの進化や変異を考えるうえで、ヒト以外の宿主から採取されたそれらのウイルスのゲノム配列を比較することは、今後それらウイルスの変異によってもたらされる可能性のある新興感染への準備や対策を講じるうえで重要な情報を与えてくれる可能性があります。

東北大学大学院医学系研究科 漢方・統合医療学共同研究講座の赤石哲也助教らの研究グループは、SARS関連コロナウイルスの進化プロセスにおいて、長い塩基配列の挿入・欠失が見られること、この変異がウイルスの進化やパンデミック発生に関与している可能性を明らかにしました。また、新たに挿入した塩基配列と類似の配列はコロナウイルスゲノム中に存在せず、宿主動物など外界に由来するものと考えられます。

本研究は、未知の部分の多いSARS関連コロナウイルスの進化やパンデミック発生に関与している可能性があり、今後、自然界における不連続変異や宿主ジャンプをしばしば起こす同ウイルスの更なる有害な変異を阻止する手段を探るとともに、新たな感染への対策を講じるうえで手掛かりとなることが期待されます。

本研究成果は、2022年7月21日に、米国微生物学会のJournal of Virology誌(電子版)に掲載されました。

図.日本のコウモリコロナウイルス(Rc-o319)で観察された様々なタイプのindelとその分布
東京大学のグループが2013年に岩手県の洞窟で採取したコウモリコロナウイルス(Rc-o319)と、2003年に中国で報告されたSARSコロナウイルスの全ゲノムを比較した。点突然変異率が高いゲノム領域において、挿入・欠失も部位特異的に集積していた。今回Rc-o319のゲノム中に同定された挿入・欠失の多くは2019年の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノムでは観察されず、日本のコウモリに感染するコロナウイルスの系統のなかで新たに発生し蓄積されてきたと考えられる。特に、半数近い挿入・欠失は下パネルに示すような、同一部位に欠失と挿入の両者が生じたと考えられる未解明の機序によるタイプであった。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
漢方・統合医療学共同研究講座
助教 赤石 哲也
電話番号:022-717-7587
Eメール:t-akaishi*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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